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第2章 ブラジル-投資環境

経済

経済動向

ブラジルはBRICs(Brazil、Russia、India、China)の一国であり、豊富な資源や食料を有するほか、航空機産業までが発達した新興工業国です。
1990年代まで主に先進国からの加重債務を抱えていましたが、1990年代以降のインフレ抑制の成功、貿易拡大、財政収支の改善などにより経済は安定し、過重な対外債務国から変貌をとげ、今や対外債権国へと変貌を遂げつつあります。2018年のGDPは1兆6087億ドルと世界7位、南半球およびラテンアメリカにおいては最大の規模を誇ります。GDP成長率では2010年以降成長率が下がり、2018年には1.050%の成長率となりました。また、一人当たりのGDPも2010年以降1万ドルを突破しています。

■GDPと経済成長率の推移

下記にGDPの推移をまとめました。2004年以降3-6%の成長を続けたのち、2009年には世界金融危機の影響でマイナス成長となりました。しかし、2010年は反動で7%以上の高成長を記録しています。その背景として、中間層の拡大による旺盛な内需の伸びがあります。

一方、一次産品の国際価格高騰や対中国輸出の伸びと、レアル高を背景とした製造業の国際競争力の低下などの複数の要因により、2011年の成長率はやや鈍化し2.7%台となり、2013年は2.5%、2014年は0.1%と辛うじてプラスに留まっています。0.5%と辛うじてプラスに留まっております。その後、2015年、2016年は-3%台のマイナス成長となりましたが、2017年より回復し、2018年は1.050%となります。

 出所:IMFWorld Economic Outlook Database

■国家財政の推移

ブラジル政府は1998年に財政安定化プログラムを導入し、その後2000年には財政責任法を施行するなど財政の健全化に取り組んできました。その結果、プライマリーバランスは改善されつつありますが、国債発行残高は横ばいのままで、それまでの国債の利払い負担により、国債の利子払分を含めた財政収支は赤字が続いています。
ブラジル政府の今後の大きな課題のひとつとして、財政規律を保ちながら、インフラ整備を強力に進めることがあります。2007年に始まった経済成長加速化計画(PAC)に基づくインフラ整備のために公共投資を増加し、2016年のリオデジャネイロオリンピックに向け、ブラジル政府はインフラ整備のための予算を約221億レアルとしています。

■インフレの抑制

第2次世界大戦以降、猛烈なインフレに悩まされてきましたが、1990年代の物価安定政策によるインフレの抑え込みに始まり、1999年に導入されたインフレターゲット制によって通貨量がコントロールされるようになり、現在は物価上昇率が落ち着き、2004年から2015年までは3-6%台に留まっておりました。2015年には9.03%、2016年は8.74%とインフレ率が上昇しましたが、2017年は3.45%、2018年には3.67%、2019年には3.56%(推定値)となっております。
出所:IMFWorld Economic Outlook Database

貿易

下記に、ブラジルの輸出入額の推移をまとめました。世界金融危機の影響を受けた2009年以外は、一貫して輸出入ともに伸びており、常に輸入額よりも輸出額が多く、貿易収支は黒字の状態が続いています。一貫して輸出入ともに伸びており、常に輸入額よりも輸出額が多く、貿易収支は黒字の状態が続いています。2017年の実質GDP成長率は1.0%で3年ぶりのプラス成長となり、貿易については、一次産品が輸出を牽引したことで全体の輸出額が大幅に伸び、内需の回復により輸入額も増加しております。また2017年の貿易収支の黒字は過去差台となっております。

■国別・地域別の輸出

2013年のブラジルの輸出先は、中国が460億USドル、米国246億USドル、アルゼンチン196億USドルと続き、日本は79億USドルで5位となっています。中国へ輸出は全輸出額に占める割合は19.0%を占めています。その多くは、鉄鉱石、大豆、原油などの一次産品で、中国の強力な資源獲得意欲に支えられた結果であるともいえます。
また、地域別輸出額に関しては、やはり中国を含むアジアが大きく、30.1%(703億USドル)、ラテンアメリカとカリブ海地域22.1%(517億USドル)、EU20.7%(485億USドル)と続きます。ラテンアメリカとカリブ海地域への輸出の伸びの背景には、この地域における貿易協定が積極的に締結されてきたことによる、政策面での追い風があります。具体的には、メルコスール(南米南部共同市場)域内の経済発展と、アンデス諸国の準加盟による市場拡大、中南米の域内貿易協定、メキシコとの経済補完協定などです。
輸出全体では前年比では-0.2%とやや減少しているなか、欧米を中心とした先進国への輸出が相対的にシェアを落とし、代わって、中国と中南米のシェアが拡大しています。さらには中近東、アフリカなどを含む開発途上国も含めた輸出先の多様化が進んでいます。

■国別・地域別の輸入

2013年のブラジルへの輸入は中国が1位(373億USドル)、2位に米国(360億USドル)、そして少し落ちますがアルゼンチンが3位(164億USドル)であり、日本は第7位(70億USドル)となっています。
地域別では、やはり中国をはじめとしたアジアからが全体の31.0%(645億USドル)と大きく、EU20.4%(424億USドル)、ラテンアメリカ16.7%(346億USドル)と続きます。
アジアで最大の輸入元は中国で、つづいて韓国が日本を抜いて2位になり、日本はアジアで3位となっています。ラテンアメリカとカリブ海地域からの輸入は、隣国アルゼンチンからの小麦、乗用車の二国間協定のあるアルゼンチンとメキシコからの自動車、チリから銅などの鉱業品など、貿易協定の域内からの輸入が増えています。米国やEUからも堅調で、また、ナイジェリアの原油に代表されるアフリカからも増えています。
全体的には、内需の伸びとレアル高という追い風により、輸出の伸びを上回る高水準で輸入は伸びています。特にアジアが突出していますが、アメリカ、EUなどの従来からの地域に加え、アフリカ地域からの資源輸入も増え、輸入元に関しても多様さを増しています。

■品目別の輸出

輸出を品目別に見ていくと、大豆13.8%(331億USドル)、原油10.5%(251億USドル)等の一次産品が全体の49.7%(1,193億USドル)と多く、次いで乗用車2.1%(51億USドル)、航空機1.4%(34億USドル)等の工業製品が36.1%(865億USドル)、つづいて木材パルプ等の半製品が12.%(305億USドル)となっています。工業製品、一次産品が前年と比べてプラスになった一方、半製品は伸び率がマイナスとなりました。一次産品は18.1%増で、中でも原油は51.2%増、大豆油かすは34.7%増となりました。さらに、大豆は29.1%増と食品に関しても、増加傾向を見せております。なお、最大輸出国である中国の全体の43%を占めるのが大豆となります。

工業製品については。乗用車と航空機の伸び率が減少したものの、全体として7.8%増となっております。乗用車の22.9%の減少はアルゼンチン・ペソの急落の影響が大きい。しかしながら、依然としてブラジルの自動車輸出国1位がアルゼンチンで5割弱が同国への輸出である。
出所:JETRO

■品目別の輸入

輸入品を品目別に見てみると、工業用資材(加工品)35.7%(647憶USドル)、資本財部品および付属品(輸送機器用部品除く)10.9%(197憶USドル)を含む原材料および中間財が圧倒的に多く57.9%(1049憶USドル)となり、次に資本財が全体の15.8%(285憶USドル)となります。次に非耐久消費財も含めた消費財が全体の14.1%(254憶USドル)、燃料および潤滑油の12.2%(220憶USドル)と続きます。
日本からは主に自動車部品、自動車、原動機、金属加工機械等が輸出されています。

出所:JETRO

産業別動向

■ブラジルの産業構造

ブラジルは、もともとポルトガルの植民地時代には、農産品を生産して欧州へ供給する拠点であったため、一次産業が古くから発達してきたという歴史があります。現在でも、いくつもの農産品の生産量が世界の上位に入る農業国でもあります。
独立後は、農産物の輸出で外貨を得て工業製品を輸入するという、開発途上国型の産業構造が続きました。しかし、1950年代ころより、輸入している工業製品を国内で生産するために、公共投資、重化学工業化、外資導入を進めると同時に、保護貿易的な国内産業育成政策がとられるようになりました。その結果、国際競争力が低いながらも、ほとんどの分野で国内生産ができるほどになりました。
その後の、ハイパーインフレと対外債務問題に苦しむ時代がつづきましたが、1990年代に解決の道筋を得ることになります。さらに、1990年代後半からとられた、貿易の自由化、外資規制の撤廃、国営企業の民営化といった自由化路線が実を結び始めました。
現在では、比較的安定した経済状態のなかで、農業、エネルギー資源、鉱工業、サービス業といった分厚く重層化した産業構造を持つ新興工業国となりました。また、ブラジルは第1次または第2次産業が活発であるイメージを持つ方も多いかと思いますが、両産業を合わせたGDP構成比は30%程であり、70%近くが第3次産業となっています。そのため、就業人口比としてもサービス業への依存度が高くなっています。

■製造業

[自動車産業]
自動車産業にとってブラジルは、二つの意味で重要度を増しています。一つは、2億人という人口を抱えた大国が、バランスのとれた産業構造を保ちつつ経済成長をとげたことによって、巨大な中間層が出現し、自動車販売の国内市場規模が急速に拡大してきたということです。2000年に入り、ブラジルの自動車産業は急成長を遂げ、世界第4位の自動車市場に成長します。しかし、2013年の新車販売台数は前年比マイナス0.9% となる376.7万台、2014年は前年比マイナス7.14%となる349.8万台となっています。
もう一つは、多国籍企業が多くを占める自動車メーカーにとって、ブラジルは域内貿易協定によって自由化された中南米マーケットの核であることです。実際、アルゼンチンやメキシコとの自動車の貿易額は輸出入とも大幅に増えており、各自動車メーカーは大陸レベルでの生産・販売の戦略拠点としてブラジルを位置づけています。
ブラジルでの自動車産業は、地域の労働人口、インフラ、州の優遇政策などの諸条件によって、サンパウロ州を中心とした特定の地域に集中して発展してきました。実際に日本企業を含む多くの自動車メーカーがサンパウロ州とその周辺に生産拠点を置いています。サンパウロ州の強みは、周囲100キロ以内で部品調達できることにあります。一方、労働組合の影響力が強く比較的賃金が高いというという企業立地としての弱みもあります。
1990代以降は、石油化学の集積地であるバーイア州などへのフォードの進出を皮切りに、徐々に分散化が進んでいます。サンパウロ州が中心であることに変わりはありませんが、ブラジル自動車産業規模の拡大と競争の激化により多様化が進んでいます。
国内販売のシェアは以下の通りです。フィアット、フォルクスワーゲン、GMなど欧米系企業が大きなシェアを持つなか、日系の自動車メーカーは各社とも、主流の小型車ではなく中型セダンの生産が中心で、全体に占めるシェア8.7%にとどまっています。それに対して、近年飛躍的にシェアを拡大しているのが韓国車で、特にレアル高ウォン安を背景とした輸入販売をメインに急進させています。また、中国勢の大型投資による本格参入が予定されており、今後より一層注目されるところです。

また、ブラジルの自動車事情の特徴として、国策としてのエタノール燃料の普及があります。原油価格見合いで、その浸透には紆余曲折がありましたが、ガソリンとエタノールの混合比率を変えて走行ができるフレックス燃料(FFV)車の開発により、ふたたびエタノールが注目されることとなりました。すでにブラジルではほとんどのメーカーで採用され、2013年の販売台数の88.5%がFFV車となっています。
電気・電子機器
ブラジルの電気・電子機器産業は、2009年の世界金融危機により落ち込んだものの、その後、各分野ともに回復基調にあります。国内の売上高を分野別に見てみると、2010年は、情報機器が32.1%、産業用機械が15.1%、電話通信機器が13.4%となっています。
特に、パソコン市場は拡大しており、国内最大のシェアを持つポジティーボ・インフォルマチカをはじめとして高い伸びを示しています。携帯電話は、輸出の伸び悩みや普及率の高さなどを背景に、今後の大幅な伸びは難しい局面にありますが、関連サービスや高機能化による活路が模索されているところです。テレビや一般家電製品は、幅広い所得層への普及と高付加価値商品の投入によって好調に推移しています。
これらの背景には、中間層が増え購買力をつけたこと、インフレがおさまりローン消費が増えたこと、消費刺激策としての減税が奏功したことなどがあります。ローン消費については、与信管理の工夫によりさらに低所得者層を取り込む試みも行われており、各階層へ浸透しています。全般的にブラジルの家電製品の市場は拡大していますが、日本や韓国、欧州と、地元資本など多くの企業がすでに参入をしており、激しい価格競争にさらされている状態です。
また、産業用機械は、自動車などの主要工業部門の活況や、政府の低金利策が後押しするかたちで、盛んな設備投資が行われるようになり、2010年は大きな伸びを示しました。
ブラジルにおける電気・電子産業の特徴はその立地にもあります。多くは、マナウスのフリーゾーン(ZFM:Zona Franca de Manaus)か、サンパウロ州に集中しています。マナウスはアマゾンの入り口に位置し、政府によるアマゾン地域振興策のための特区として、税制優遇による企業誘致をしてきた地区です。消費地との距離や輸送や人材の確保に関してサンパウロ州が圧倒的に有利ですが、税制のメリットにより、日本のメーカーをはじめ多くの企業がZFMを拠点としました。そのため、電気・電子産業の集積地となっています。

■農牧業

ブラジルの主な農畜産品の生産量と、世界ランキング上位の品目を以下にまとめました。金額換算すると、牛肉がもっとも多く253億ドル、さとうきびが234億ドル、大豆が177億ドル、以下、鶏肉、牛乳、豚肉、米、オレンジ、コーヒーとなっています。さとうきび、オレンジ、コーヒーなどは世界一の生産量をほこり、牛肉や鶏肉など多くの品目が上位にあります。世界的な需給バランス、気候変動、投機的マネーの動きなどによって、価格が大きく変動するものが多いことを前提としても、多くの主要農畜産品がブラジルで生産されていることがわかります。
ブラジルのGDPに占める農林水産業の比率は2013年で6%と低いのですが、輸出にしめる比率は37.9%(764億米ドル)にも上ります。また、労働人口の19%にあたる9,700万人ほどが農畜産業に従事しており、農畜産業大国であり、かつ圧倒的な食料輸出国であるといえます。輸出先としては、この数年間に中国向けが急増し、2013年で19%とトップです。つづいて米国、アルゼンチン、オランダとなっており、日本は5位です。

大豆
大豆は古くからブラジルで生産されており、その生産高は2013年にアメリカと並び、世界で第1位になりました。過去数十年にわたって作付面積を増やし、かつ、生産性も約20年間に数倍に向上しています。その背景には、生産地が従来の南部から中西部にまで拡大したことや、欧米の食料メジャーがさかんに投資をしていることなどがあります。一方、生産地が内陸に多く輸送コストが高くつくこと、森林保護と耕地面積拡大の相反といった問題もあり、インフラ整備と環境保護のバランスが今後の重要なテーマとなっています。
食肉
ブラジルの食肉生産量と輸出量はともにここ数年大きく伸びています。牛肉は生産量では米国に次いで世界第2位、輸出量は2015年にインドに抜かれ、2位になりました。鶏肉は生産量では米国、中国に次ぐ第3位ですが、こちらも輸出量は第1位となっています。
伝統的に畜産業が盛んだったことがありますが、この数年間の急速な拡大の背景には、放牧が牛のメインの飼育方法であるため、動物性飼料による牛海綿状脳症(BSE)の影響が少なかったことや、鳥インフルエンザの流行地域から地理的に離れていたことなど、防疫上の有利さがありました。さらには、中国をはじめとする世界的な需要増と、それに対応できる生産余力がベースにあるため、今後さらに食肉輸出は増加し、輸出産業として重要度を増していくことが予想されます。
さとうきび(砂糖とエタノール)
ブラジルは砂糖とその原料であるさとうきびの生産量がともに世界1位です。連作が可能で農薬を必要としないさとうきび生産は、砂糖の原料として古くからサンパウロ州を中心として生産されていました。砂糖は国際的な気候変動や相場にの影響により価格変動が大きい品目ですが、古くから主要な輸出品目の一つでした。
近年注目されているのが、ガソリンの代替燃料としてのエタノールです。米国ではとうもろこし、ブラジルではさとうきびを原料として、すでにこの2国がエタノールの世界生産の7割を占めています。ブラジル国内のさとうきびの精製所は砂糖とエタノールの両方の精製ができる施設が多く、近年はエタノール専用の精製所も増えています。この分野には、世界の食物メジャーだけでなく、オイルメジャーも参入を始め、活発な動きが見られます。今後さらに拡大が見込まれる成長産業となっています。

■鉱業

鉄鉱石
ブラジルは世界でも有数の鉱物資源が豊かな国で、なかでも、鉄鉱石は世界第2位の生産国、世界第1位の輸出国です。ブラジル国内に基盤を持った製鉄分野があり国内消費量が相応にあるにもかかわらず、鉄鉱石の供給力が高いため輸出大国でもあるのです。輸出先のトップは圧倒的に中国で42.9%(1億2640万トン)を占め、次いで大きく差がありますが日本(3080万トン)となっています。
元国営企業で1997年に民営化された鉱物資源メジャーであるヴァーレは、世界の鉄鉱石貿易の3割を占めています。粗鋼生産に関しては、世界最大手のアセロール・ミタルや、新日鉄と手を組んだウジミナスなどの多国籍企業の多くが、ブラジルを粗鋼生産の拠点のひとつとしています。豊富な鉄鉱石の供給余力に支えられて、今後も鉄鉱石輸出と粗鋼生産の双方が展開されていくことが予想されていますが、中国の需要動向が大きな鍵となることは間違いありません。
石油
ブラジルは、もともと石油の国外依存度が高い輸入国で、過去にはオイルショックで大きな痛手を受けました。その後、国内油田開発を進めた結果、輸出超過となり現在では石油自給国となっています。特に深海油田開発技術の進歩が貢献し、南半球最大の石油採掘会社であるブラジルの政府系企業であるペトロブラスによる新油田の開発が急ピッチで進んでいます。原油調達の中近東地域への依存を緩和したい日本にとっても、今後ブラジルの石油は重要度を増していくものと予想されています。

Latest News&Updates

【カナダとメルコスール間での自由貿易協定締結へ】

ブラジルカナダ商工会議所が主催したイベントにて、ブラジルとカナダ間における貿易関係の現状が発表され、将来自由貿易協定が結ばれた場合、例えば農作物など、ブラジル製品がカナダへ輸出されることによって、ブラジルに大きな恩恵を与えることになるであろうと発表されました。

 

今後も、メルコスール(南米南部共同市場)とカナダ間では、例外を設けず、幅広い範囲で交渉に及んでいくとの事であり、また、その他産業部門、自動車業界、輸送機器業界、なども前向きに検討しているとしています。

また、ブラジル外務省の話では、今後、ブラジルがカナダとの二国間での協議を行うことに興味を示しており、「2018年10月頃にカナダ政府の代表者との会合を検討している」と述べています。

 

一方、サンパウロのカナダ総領事館によると、国際協定に関する議論は、諸国の発展にとって不可欠であるとし、こちらも相互の協定締結へ向けて前向きな姿勢を見せていると言えます。

 

カナダメルコスール間にて自由貿易協定が締結されれば、今後、カナダへのブラジル製品輸出が一気に拡大することが期待できますので、今後の展開に注目していきたいと思います。

 

 

投資環境

アンケートから見るブラジルの投資環境

■ビジネス環境の現状2015
世界銀行と国際金融公社(IFC)が、「ビジネス環境の現状2019」を共同で発表しており、このアンケートから世界のブラジルへの評価をみることができます。
ブラジルは、このランキングの総合順位が190の国と地域中109位で、前年から順位を16つ上げています。一方、日本は39位(「ビジネス環境の現状2017」では同位)でした。ブラジルと日本の総合順位は70位ほどの差があり、世界からのブラジルへのビジネス環境への評価は、日本と大差があると考えられます。
2019年のランキングでは、ブラジルは日本に比べ、「投資家の保護」と「契約執行状況」の2点において有利であると評価されています。「事業の開始」「建設許可手続」「税金の支払」「クロスボーダー取引」「資金の登録」については今後も課題となり法の整備等が求められます。

■日系製造業企業の海外事業展開の動向

国際協力銀行(JBIC)が2017年1月に公表した「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(第30回/2018年版)」に関して、海外事業に実績のある日本の製造業企業の海外事業展開の現況や課題、今後の展望を把握する目的で、1989年から毎年、アンケート調査が実施されています。
出所:国際協力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(30回)」
ブラジルは、中期的勇ぼ事業展開先2017年までは順位の変動はあったものの10位以内にランクインしていました。

いかし2018年では順位を2つ落とし12位となっています。

しかし、その後は両国を抜き、中国、インド、ベトナム、タイの次の地位まで上昇しました。
このことから、ブラジルにも事業展開の目が向けられ、日本の製造業企業のブラジルへの投資意欲を誘引しており、投資先としての魅力は依然として高いと考えることができます。
同アンケートでは、このように高い評価を維持している源泉である「ブラジルへ有望理由」(回答社数計:138社)についても回答結果を公表しており、その上位は以下の通りです。
1. 現地マーケットの今後の成長性  82.3%(回答数65)
2. 現地マーケットの現状規模        29.1%(回答数23)
3. 組み立てメーカーへの供給拠点として 19.6%(回答数13)
4. 安価な労働力                11.4%(回答数9)
5. 第三国輸出拠点として         8.9%(回答数7)
やはり、「現地マーケットの今後の成長性」、「現地マーケットの現状規模」には高い評価があり、組み立てメーカーへの供給拠点としての期待もあることから、近隣諸国へのビジネス展開に魅力を感じているということが分かります。

 

直接金融(株式)市場

ブラジルサンパウロ市にある、サンバウロ証券取引所(BM&F Bovespa:Bolsade Mercadorias e Futuros Bolsa de Velores de Sãopaulo)は、ブラジルで最も大きい証券取引所で、1890年に設立されました。サンバウロ証券取引所はラテンアメリカの中でも1位と非常に大きなシェアを占め、南北アメリカ大陸においても、ニューヨーク証券取引所、NASDAQ、トロント証券取引所に次ぐ、第4位の取引量を誇ります。
2014年の時点で、BM&F Bovespa への上場企業数は363社であり、そのうち12社が外国会社です。2014年の世界取引所連合(WFE:World Federation of Exchanges)発表の数値によると約8,439億ドルで、2010年には世界第9位の株式時価総額でした。2010と比べて20.5%も下がっている状態ですが、ランキングが10位から9位に上がっています。
ブラジルの代表的な株価指数はブラジルボベスパ指数です。この指数の特徴は、構成銘柄数63の内、ペトロブラス(半国営企業である石油会社)とヴァーレ(鉄鉱石の生産高世界一の資源採掘会社)の2銘柄で時価総額の4割近くを占めているという点です。指数時価総額は3兆5000億円程度となっています。
ブラジルの株価は世界経済の減速、米国や欧州での財政不安等の対外的な要因に加え、継続的な追加利上げ等の内的な要因のためこの数年低迷していますが、2014年開催のワールドカップがあったことや、2016年開催のオリンピックを控えており、今後は株価上昇も期待されています。

 

為替

ブラジル地理統計院によると、2016年の消費者物価指数の上昇率が前年比10.67%になったと発表し、2014年の+8.13%以来の高水準となりました。2011年1月から7月にかけて、景気過熱と物価上昇を抑制するため、連続して利上げを実施されましたが、9月以降に利下げに転じました。国内の景気減速感が高まっているため、今後も利下げが見込まれます。2019年のインフレ率は推定値ですが、3.563%だと推測されています。
出所:IMFWorld Economic Outlook Database2019
1999年にブラジルでは通貨危機が起こり、一時期レアルの為替相場は80%も大暴落しました。しかし、IMF(国際通貨基金)の金融支援および貿易黒字によって、この通貨危機を乗り切ることができましたが、2003年から2005年にかけてレアルの為替レートは非常に激しい状態が続きました。これによって、2005年にIMFへの債務完済を果たしたことで、為替レートも安定し始め、現在ブラジルはBRICsの一員として安定した経済成長を見せています。
ブラジル為替は現在完全変動相場制であり、2007年頃から2008年9月の世界危機まで対日本円において60円台で推移していました。しかし、世界金融危機を経て、約40円程度まで一時的に暴落。その後、40円~50円の幅で緩やかな変動を続けていましたが2015年以降、レアルが再び暴落し約30円ほどで推移しています。
出所:世界の経済・統計情報サイト
出所:世界の経済・統計情報サイト

外国直接投資(FDI)

ブラジルの外国直接投資(FDI)は、1990年代初めには10億ドルにも満たなかったが、1997年の190億ドル、1998年の289億ドルと拡大し、急激な伸びをみせています。
ブラジルは1990年代の経済自由化によって、世界的に投資先として注目を浴びるようになりました。経済自由化が進むことによって、いろんな部門への直接投資が順調に増え、経済的に大きく成長し続けています。これによって、現在ではラテンアメリカの経済規模の大半を占めているのが、アルゼンチンとブラジルです。
ブラジルで経済自由化が進み始めた当時、国内市場目当てだけではなく、ラテンアメリカ市場を念頭に外国からの直接投資が増え始めました。また、国内の民営化が製鉄、化学、電力、鉄道、鉱業、通信、電力、金融などの部門で本格的に実施されました。特に欧米の企業が積極的に参加し、1997年から1999年にかけて、欧米だけで直接投資全体のそれぞれ25~40%を占めていました。
もともと豊富な天然資源が賦存し、部品をはじめ工業化が進んでいるブラジルにおいて、今後のブラジル市場の潜在的な成長性が期待され通信、金融、商業などサービス部門への投資が急増しています。

■国別外国投資受入額

2013年度におけるブラジルへの国別投資額ではオランダ、米国、ルクセンブルクが高い比率を占めています。ここでの最も大きな変化は、2009年度に比べてルクセンブルグからの直接投資が16倍以上増えています。日本は第5位であり、約25億ドルの投資を行っています。かつて日本は全体に占める割合20%以上もの投資を行っていましたが、現在では約5%と1/4の割合にまで下がりました。

■業種別外国投資受入額

2013年度におけるブラジルへの外国直接投資を業種別にみると、石油・天然ガス採掘への投資が全体の14.5%とトップで、商業(自動車を除く)が12.6%、金融サービス・同補助業が7.8%と続いています。この数値からも広大な面積に含まれる豊富な天然資源分野への投資額が大きいことが伺えます。上記でも述べたとおり、工業部門が進んでいるブラジルですが、近年では通信、金融、商業などのサービス業への直接投資が増え続けています。

 

インフラ状況

世界経済フォーラムが行う、インフラ等の世界競争力を調査する「世界競争力レポート(The Global Competitiveness Report)2013-2014」によると、ブラジルのインフラレベルは調査対象の全142カ国中の114位に位置しています。この順位は輸送、電話通信、エネルギーに関連した全体的なインフラの質的評価であり、他のBRICs諸国、南米諸国(チリやウルグアイ)と比べてもかなり低い結果となっています。

ブラジルでは、地域振興政策として経済の中心であるサンパウ経済圏から遠隔地に産業拠点が設けられています。例えば、サンパウロから約4,000キロ離れた北部アマゾナス州マナウス・フリーゾーン(ZFM)がそれにあたります。海運、陸運、空輸といった長距離輸送インフラの整備が極めて重要にもかかわらず、整備状況はまだまだ低い状況です。
[道路]
道路の質については、同レポートにおいて世界第118位とされています。実際の整備状況をみると、ブラジルの高速道路総延長は約175万kmに対して、舗装率はわずか11.2% (約20万km) に過ぎません。
ブラジルでは、国内貨物輸送の約6割を道路に依存しており、道路輸送が内陸輸送の核となっています。各地域はそれぞれ、地理的条件や発展経緯により道路状況が異なり、中でも北部と南東部ではその特徴が顕著に現れています。
北部は面積が広いものの、熱帯雨林で覆われており、連邦道路も主要幹線に限られています。州政府管轄の道路は、ある程度整備が進んでいますが、道路状態はあまりよくありません。そのため、同地域では、アマゾン川およびその支流を利用した輸送方法が主に取られています。
一方、南東部は、サンパウロやリオデジャネイロという大都市を有しており、ブラジルの中で都市化が最も進んでいる地域です。そのため、都市部を中心に連邦政府管轄の道路が集中しています。
ブラジルでは州内および市内の道路網の発達のほか、都市間を結ぶ道路網も整備が行われています。舗装整備も進んでいますが、アスファルトの状態は地域によってかなりの差があります。これはブラジルの気候が影響しており、太陽熱で高温に熱しられた後にスコールで急冷され、頻繁にひび割れが起こり、アスファルトを良い状態に保つことが困難な為です。
[鉄道]
鉄道の質については、同レポートにおいて世界第91位とされています。2010年時点では総距離約3万kmで、そのうち459Km (1.6%) のみが電気を動力として運行しています。速度向上や快適性の向上といった輸送サービスの改善につながることから、鉄道の電化が検討課題として挙げられています。
鉄道網はブラジル全土で総延長約29,000kmあり、世界第10 位をほこっています。その大半は南部、南東部、北東部の海岸に近い地域に集中しており、道路網と同様に内陸部との連結は依然不十分な状況にあります。
鉄道は、鉱物や農産品を産地から輸出港湾まで運搬するための輸送手段として用いられているのが現状です。鉄道による貨物輸送は、国内貨物輸送の約2 割を占め、このうち鉄鉱石の占める割合が極めて大きく、これに続いて、農作物や大豆、製鉄製品の輸送も鉄道輸送の大きな割合を占めています。以前の鉄道運営は国営でしたが、現在は日本のように民営化が行われ、サービスの改善やインフレの安定化も受けて、その結果鉄道による輸送が今後増加すると考えられています。
[港湾]
港湾の拡大や浚渫(しゅんせつ)、設備やシステムの近代化が急務とされています。また、ブラジル最大のサントス港では、トラックによる輸送が多数を占めるため周辺道路が慢性的な渋滞となる事態が続きました。海運・陸運の接点である港湾周囲の総合的な整備に多くの課題が残されています。
現状では、アジア諸国からブラジルまでの海上輸送には1カ月ほど時間がかかります。そのため、アジア諸国からブラジルへの輸送日数削減のため、コロンビアの港に寄港させ、そこから内陸輸送を行うルートも実用化が検討されています。また、ブラジル国内の輸送の中でも場所によっては、内陸のトラック輸送に加えて海上ルートも活用されています。
[航空]
広大な国土を持つブラジルには大小あわせて4,072もの空港があります。しかし、その中で舗装された滑走路があるのが17.8% (726空港)、3,047mを超える滑走路のある空港はわずか0.2% (7空港) のみです。経済成長にともなって急増した国内外からの移動に対して、主要な手段である航空・空港設備が追いついていない状態にあります。
さらに、2016年にリオデジャネイロで開催されるオリンピックにあたり、航空利用客の激増が見込まれています。主要空港のキャパシティ拡大や機能向上を含めた整備が急務となっており、すでにサンパウロ国際空港をはじめとする主要空港の運営権を売却するなど、民営化による空港インフラの整備の動きが加速しています。
[電力]
電力の供給については、同レポートにおいて世界第69位となっています。電力供給部門では他の部門(輸送形態など)より高くランクされていて、平均を上回る69位にランクされています。ブラジルにおいて電力総生産の80%は再生可能エネルギー源(水力、風力、バイオマス)から作られ、残りの20%が再生不能エネルギー源(石油、ガス、原子力)によるものとなっています。
[通信]
ブラジルは固定電話回線数では52位、移動式電話契約台数では45位にランクされています。ブラジル国民の多くはどちらも持たない一方、複数の回線契約を持つ国民もいることが留意すべき点だといえるでしょう。ブラジルで発表されているいくつかの調査結果や記事によると、携帯電話の使用が増えているため、固定電話契数が頭打ち状態にあるとされています。
ブラジルは、中南米ではもっともPCの保有台数(3,000万以上)が多く、インターネットにかける時間も世界一といわれています。選挙の投票は100%コンピューター化されており、銀行取引の90%が窓口を通さずに行われているIT普及国です。通信環境は他のインフラとくらべて整備が進んでいるといわれています。
[放送]
ブラジルのテレビ視聴世帯数は約4,200万と中南米ではもっとも多く、地上アナログテレビ放送を受信している世帯が約82%となっています。2009年段階での地上デジタル放送の提供範囲は28都市(20州都)となっています。
[上下水道]
アマゾン川ほか多数の水系を誇るブラジルは世界一の水資源国ですが、上下水道のインフラ整備は不十分です。特に下水道普及率は42.0%(2007年段階)に過ぎません。これは、公衆衛生のための公共投資がほとんど行われてこなかったことに大きな要因があります。現在進行中の第2次成長加速プログラム(PAC2)には整備予算が盛り込まれていますが、各自治体での実施には課題も多く、民間セクターによる進捗が期待されているところです。

 

その他の投資メリット・デメリット

■人材

ブラジルの人口ピラミッドは、日本と同じ釣鐘型をしておりますが、つぼ型に変化していく日本と違って、0-4歳の子供世代まで裾が広がっているのが特徴です。人口は増え続け、2040年には2.2億人になることが予想されています。
ブラジルでは時間厳守という考えを持たない人が多く、仕事上でも談笑や休憩に時間を費やす労働者が多いとされています。しかし、労働環境に関しての要求が多く、ブラジル人を雇用することの難しさが如実に現れています。
職場に関しての考え方は、やりがいや目標を重視するのではなく、いかに賃金や待遇が良い環境で働くことができるかを重視しています。ブラジル人の特徴として、転職を重ねることが一種のステータスと考えられています。もちろん、一つの会社に長く就労する労働者も存在しますが、そのような人は会社から高給を得ており、また会社から引き止められている可能性が高いといえるでしょう。多くの労働者は就職をしても新しい職業を探し求め、好条件な職場を見つけ次第転職します。これに伴い、経営幹部や管理職に就くブラジル人が圧倒的に少ないという現実があります。2006年では全体の労働者のうち、経営幹部は4.9%、管理職は8%、2007年では経営幹部は4.9%、管理職は8.6%、2008年では経営幹部は5%、管理職は9%となっています。どちらの役職もほぼ横ばいで、所得が多い両役職に就くブラジル人が少ないことがわかります。
就学率は、2008年には初等教育が94%、中等教育が81%、高等教育が34%です。高学歴化が進んでいるとはいえ、まだ高等教育に就学する割合は少ないといえます。識字率は2007年段階で90%と高いものの、高等教育の割合が少ないということは、経営幹部や管理職になる人材が少ないということに繋がっていると考えられます。

■巨大な消費市場(世界第5位の人口、中間層による消費への期待)

ブラジルの人口は約2億947万人と世界で5番目に人口が多い国です。日本の人口が約1億2,623万人なので、約1.8倍にあたります。ブラジルは急激な人口増加はないものの、年々緩やかに増加しています。都市化が進むと同時に、農村部の過疎化が進む一方で、北部人口の23%増加や、中西部人口の20%増加など、今まで人口が少なかった地域の人口増加もうかがえます。
都市人口の増加割合は年々少なくなってきているものの、年平均1%ペースで増加を続けていて、労働需給の深刻化がますます大きくなっています。
ブラジルでは所得階層をAクラスからEクラスに分類しており、ブラジルの主な消費母体であるAからCクラス層が国内全体に占める割合は、2017年時点で64.8%にまで増加しています。今後もこのCクラス人口が増加することによる消費市場の拡大が見込まれています。

■日系ブラジル人

ブラジル地理統計局院は、2011年4月に2010年実施の10年に1度行う国勢調査の結果を発表しました。その結果、黄色人種と申告したのは208万人で、大半が日系人だとされています。近年、サンパウロ州に集中していた日系ブラジル人による他の州への移住が進んでいます。その理由として、ブラジル内陸部の地域開発、日系人の日本への出稼ぎが挙げられます。
日系ブラジル人の学歴は相当程度高いものとされており、近年特に学歴上昇が顕著だといわれています。所得については、農牧業から工業・サービス業に移り、経済的構造の変化がうかがえます。その中で、先住民、ブラジル人ともに所得格差が拡大しており、日系ブラジル人だけをみても、格差が拡大していることがわかっています。
今後のブラジルにおいて、ますます日系ブラジル人と非日系ブラジル人との異民族間結婚が増すことが予想されており、日系ブラジル人というくくりで様々な調査をすることが困難な傾向にあります。一方、サンパウロ等の都市部において、日系ブラジル人の若年層が集まり、結婚するという傾向がみられています。特に日本の文化を積極的に伝承しようという意識をもっているわけではなく、やはり、同じ日系ということへの安心感で、日系人同士が集まるという状態です。
日本人にとって、ブラジルは地理的には遠方ですが、世界最大規模の日系人社会が存在し、無視できないつながりのある国です。これからも相互理解を進め、注目が集まるブラジルとの結束を強めていければ、日本・日系社会ともに活性化が期待できるでしょう。

 

日系企業の進出状況

■日本企業の直接投資

 現状、日本企業によるブラジルへの直接投資は、残念ながら低迷しています。かつて、ウジミナス製鉄、イシブラス造船、ツバロン製鉄など、ブラジルで重要な位置を占めていた日系企業が多数存在していました。しかし、平均的に投資規模が欧米企業と比較して小さく、長期的視野に欠けるなどの問題があり、1980年代の経済危機を乗り切れずに撤退が相次いだことなどから、その地位は低下する傾向にありました。
1990年代前半には全体に占める割合が10%以上もあった日本の外国直接投資額(FDI)ですが、2010年においては全体の4.7%ほどであり、国別順位では世界第7位の投資額となっています。

■日本企業の進出数

1950年代以降、日本の高度経済成長期にかけて東芝やトヨタ自動車、東京海上日動、コマツ、ヤクルト本社、日本航空など、重工業から金融、サービス業や運送業にいたるまで、様々な業種の日本企業がブラジルへ進出を果たしています。中でも、1970年代の「ブラジルの奇跡」と呼ばれる高度経済成長期において日本企業のブラジル進出が盛んに行われ、ブラジル日本商工会議所会員数も、1970年代から1990年代にかけて急激に会員数が増えています。
しかし、その後のブラジルハイパーインフレや日本経済の悪化によって、日系企業の撤退が相次ぐこととなり、2000年代にかけて同商工会議所会員数も若干数減少しています。現在は、BRICs随一の親日国として、ブラジルは多くの日系企業から注目を集めています。近年は同商工会議所会員数も着実に増え続けており、サンパウロを中心に300社以上がブラジル進出を果たしています。

JETRO調べによる日系企業のブラジル進出数は、2010年12月段階の調査において、400社を超えています。この中でブラジル日本商工会議所の会員数は、2012年4月時点で333社となっています。他のBRICs諸国と比較すると、ロシアには約600社、インドには約800社、中国には約26,000社の日系企業が進出しており、ブラジルにおける日系企業進出数はまだまだ少ないのが現状です。
しかし、上述の通り、今後のブラジルにおいては、2014年のワールドカップ開催があったことや、2016年のオリンピック開催が控えていることから、経済の急激な成長と、外資に対する受け入れ態勢の向上から、日系企業の進出数も飛躍的に伸びると予想されています。

 

 

主な地域情報

【北部】

■アマゾナス州マナウス

マナウスはブラジル最大面積をほこるアマゾナス州の州都で、人口180万人の大都市です。アマゾン川の河口から約1,700キロに位置し、1万トンクラスの接岸が可能な港を擁するアマゾン川の水運拠点でもあります。空路あるいは水路が、現在マナウスからブラジル国内の主要都市へ移動する主な手段となりますが、南東部の主要都市から約3,000キロ近い距離があり、交通の便はあまりよくありません。年間降雨量2500mmを越える熱帯雨林の気候で、特に雨季(12月から5月)には雨が多いです。
もともとゴムの一大生産地であり、19世紀後半以降長らくブラジルの産業を支え、繁栄してきましたが、次第にゴムの国際競争力が弱まり、1910年のゴム市場崩壊から一時は衰退しました。しかし、1960年代以降における鉱業、農業の開発や、1967年にインフレと外貨準備高の不足を是正するための輸入制限を強化する中で、経済マナウス・フリーゾーンとして免税都市に指定され、マナウスにて税制優遇を行われ、外資系企業、特に製造業の誘致が盛んに行われました。
諸外国から部材を輸入し、マナウスで完成品を組立て、国内市場向けに販売する、というビジネスモデルが確立されており、その結果、現在ではフリーゾーン内総生産は全国の1.5%、その3割以上を製造業が占めています。
日系企業も二輪車や電気・電子機器メーカーなどが多数進出しています。また、マナウスはアマゾン地域の多くの国立公園、環境保護区に隣接している為、アマゾン観光の中心地としても有名です。日本人、日系人も多く住んでおり、日本領事館や日本人学校もあります。
[マナウス(マナウス・フリーゾーン:Zona Franca de Manaus)]
マナウスはブラジル内陸部に位置し、大市場かつ部材供給基地であるサンパウロ州まで約3,000km、大西洋の港町ベレンまで1,300kmもあり、物流面で極めて不利な場所にあります。このような辺鄙な立地にあっても、企業がマナウスに拠点を置く最大の理由として、マナウス・フリーゾーンにおける大幅な減税措置が挙げられます。税制が複雑かつ税率が高いブラジルにおいて、この減税措置は大変魅力的なものです。
マナウスは部品を輸入して加工組立を行う外資企業にとっての主な投資先であり、現在ではブラジルを代表する工業地域となっています。マナウスで製造された製品の9割以上が国内向けとなっていますが、近年では海外への輸出が拡大し、海外売上が増加する傾向にあります。主要セクターは二輪製品、電気・電子製品、インフォマティクス関連製品、化学製品となっています。
マナウス・フリーゾーンが設立されて以降、日本、韓国、ヨーロッパ、アメリカ合衆国企業のマナウス進出が目立つようになり、2009年時点で600社以上の外資企業が進出しています。日系企業では、松下電器、ソニー、モトホンダ、ヤマハ発動機、サンヨー、フジフィルム、東京海上、TDK、村田製作所など、30社以上の企業が挙げられます。特にモトホンダは、年間100万台のオートバイを生産し、7千人以上の従業員を雇用しており、マナウス・フリーゾーンの中でも重要な地位を占めている企業の一つです。これらのマナウス進出企業は、アマゾナス日系商工会議所に所属しています。
また、日系企業以外の進出企業の例としては、ペプシ、コカ・コーラ、ノキア、シーメンス、エルジー、サムスン、ハーレーダビッドソンなどの外国企業が挙げられます。

■アマゾナス州アマゾン

ブラジルは人口が地域的に偏在しており、北部アマゾン地域においては面積では国土の半分以上を占めますが、人口は全体の1割以下にすぎません。人口密度は、サンパウロなどがある東南部に比べると20分の1程度です。
赤道に近く、雨量の多いアマゾン地域は、ほとんどが広大な熱帯雨林です。他の地域とくらべると土地の利用は進んでおらず、経済活動も活発ではありません。現在のブラジル政府は、企業への投資優遇をする一方で、アマゾン地域における環境保護の重視を表明しています。そのため、上述のマナウスや、水運の拠点であるべレンなどの一部の都市を除けば、開発には一定の抑制がかかると見られています。
熱帯雨林を伐採して農地や牧草地にするという従来の開発方法から、持続可能な開発方法が模索されており、アグリビジネス、エコツーリズム、地下資源の有効利用など、大きな可能性を秘めた地域であるともいえます。
【北東部】
■バイーア州、セアラー州、ペルナンブブッコ州、バイーア州、セアラー州、ベルナンブッコ州など、大西洋側に位置するブラジル全土の18%の面積を占める地域です。この地域の主要都市は、ペルナンブッコ州の州とレシッフェと、バイーア州の州とサルヴァドールとなります。北東部は、入植の歴史や黒人系の多い人種比率などにも特徴があり、独特な文化を持った地域です。南東部に次いで人口が多く、全国の約3割、5千万人以上が住んでいるのですが、他の地域にくらべて教育水準が低く、経済的には立ち遅れた地域とされていました。
しかし、1990年代より、連邦政府による政策的な産業振興による所得格差の縮小策が図られておりてきました。また、北東部開発管理庁(SUDENE)による北東部開発が成果を上げ、バイーア州、ペルナンブッコ州、セアラー州での石油化学、製鉄、自動車関連の大型投資の伸びとともに、2010年にはブラジルの平均経済成長率(GDP)を大幅に上回りました。今後のさらなる伸長が期待されている地域です。日系企業は、バイーア州に出光興産、三井化学、住友化学などが進出しています。
【南東部】

■サンパウロ州

サンパウロ州は、大都市サンパウロを抱えるブラジル経済の中心地です。サンパウロ市は人口1,000万人以上、都市圏全体では2,000万人にもおよび、人口、経済規模ともに南米最大の都市であり、また、都市圏内にブラジル最大港であるサントス港もあり、輸出入や国内流通の要所でもあります。
同州は、大都市圏でありながら製造業の一大生産拠点ですが、やはりサンパウロ市内は過密で地価が高く、製造業の多くは周辺都市に立地しています。サンパウロ市近郊の工業地帯にて、自動車メーカー、コンピューターメーカー、家電製品メーカーなど欧米や日本などを含む多数の企業が生産拠点をおいています。日系企業、外資系企業のオフィスは、サンパウロのほぼ中心部に位置するパウリスタ大通り沿いのオフィスビルに入居し、営業活動を行っています。
現在、サンパウロでは労務費の高騰が問題となっています。優秀な人材、特に外国語を使える人材の需要は逼迫しており、その確保にかかるコストの上昇が指摘されています。サンパウロ市東部に隣接し、自動車産業が集積する工業地帯であるABC地区(ABC:Santo André市、São Bernardo do Campo市、São Caetano do Sul市周辺)の金属労働組合が、自動車メーカー各社との賃上げ交渉の結果、名目10.81%の昇給と2,200レアルのボーナスを獲得したという例もあります。毎年必ず上昇する賃金は、深刻な製品コストの上昇要因ですが、一方で家電販売の増加など、経済成長への波及効果が大きいのも事実です。
同州は人口が多いことから、ブラジルにおける最大の消費地でもあります。市内には多くの商業施設やオフィス街があり、住居区も隣接しています。また、中南米最大となるサンパウロ証券取引所があり、欧米や日本の金融機関が進出している金融業界の中心地でもあります。
自国内、他国からの交通網も発展しています。2010年にはアメリカの外交専門誌フォーリンポリシーにより、サンパウロは世界第35位の都市に選ばれています。これは、「ビジネス活動」、「人的資本」、「情報交換」、「文化的経験」、「政治的関与」の5つの分野の総合スコアにより順位づけされており、その都市の政治的、経済的な豊かさを表しているといえます。ちなみに同ランキングにおいて、1位はニューヨーク、2位はロンドン、3位が東京となっています。明治以降からの日本人移民、その子孫である日系ブラジル人が最も多い都市であり、郊外には世界でも有数規模の日本人学校、サンパウロ日本人学校があります。
2010年時点での日系進出企業数は160社となっています。1950年代以降、自動車、重工業、金融、家電などの分野で日本大手企業のサンパウロ進出が相次ぎ、トヨタ自動車、東京海上日動、コマツ、日本航空、東芝、ヤマハ発動機など、様々な業種の日系企業が進出しています。

■リオデジャネイロ州

州都リオデジャネイロ市は、人口は約800万人、都市圏人口は1千万人超えており、サンパウロに次ぐブラジル第2の都市です。リオデジャネイロは、1763年に最初の首都サルヴァドール・ダ・バイーアよりポルトガル植民地の首都に遷都され、1822年から1960年までは独立後のブラジルの首都でした。その後、1960年に現首都のブラジリアに遷都されています。
同州は2014年のサッカーワールドカップの開催地の一つであるとともに、2016年の南アメリカ大陸初となる第31回夏季オリンピック開催地に決定しており、大規模なインフラ整備が盛んで、間近に迫る大きなイベントと、その後の発展が世界的にも注目されている地域です。
都市のGDPは2010億ドルであり世界第30位、南米ではサンパウロ、ブエノスアイレスに次ぎ第3位です。サンパウロに次いでブラジル第2位の経済規模を持ち、ブラジルGDPの5.4%をリオデジャネイロが生み出しています。
鉱物メジャーのヴァーレや、石油採掘会社のペトロブラスといった政府系の巨大企業が旧首都であるリオデジャネイロに本社を置いているため、関連企業も多く立地しています。最近の話題として、リオデジャネイロ近海にて深海油田が発見されており、ペトロブラスを中心とした開発が注目を集めています。首都移転により行政機能は失われましたが、ペトロブラス社などの公企業や半官半民企業はブラジリアへは移転せず、リオデジャネイロに本社を置き続けています。
石油、天然ガスの産出により鉱工業分野が発達しており、工業面ではブラジル第2の都市として、石油精製や造船、鉄鋼、冶金、石油化学、薬品、セメント、印刷、ゴム、食品などの産業が立地しています。
日系企業の進出は商社が中心となっています。1955年時点で日本からの進出は、三井物産、三菱商事、伊藤忠の3社のみでしたが、同年にリオ日伯商業会議所を設立、1971年よりリオデジャネイロ日本商工会議所に名称が変更、現在は60社近い日系企業が会員となっています。サンパウロに次ぐ、外資企業の進出先として注目されています。現在は上述の日系商社や、三井海洋開発、東洋エンジニアリングなどの石油関係企業、日本無線などが進出してします。
【南部】

■パラナ州

パラナ州は、ブラジルにおいてサンパウロに次いで日系人が多い都市となっています。同州はブラジルでも有数の農業州ですが、1970年代に入ってクリティーバ工業団地の建設等を通じて工業化が進み、外資企業の企業誘致も積極的に行われた結果、多くの製造業企業が進出するに至りました。
クリティーバ首都圏を中心とし各地域に、ルノー、フォルクスワーゲン・アウディ、日本の日産自動車など外国自動車メーカーが相次いで進出し、伝統的な農業を維持しつつも、サンパウロ州、ミナスジェライス州に次ぐ自動車生産州として発展しています。
主な日系企業は、東芝配電システム、古川電気工業、デンソー、日産自動車、ジェイテクト、住友ゴム、シミズ工業などが進出しており、いずれも大型の工業用地を有する企業となっています。2012年4月時点では日系企業の進出数は18社、他にも多くの外資企業がパラナ州に進出しており、パラナ日伯商工会議所の会員も110社となっています。
主要都市であるクリティーバは、1853年にサンパウロ地方が分割されたことに伴い、新設されたパラナ州の州都です。ブラジリアと同じく計画都市ですが、ブラジリアと大きく違う点は、人が済むための都市として構築されているということです。1996年にはイスタンブールで開催されたサミット「第2回国際連合人間居住会議」において、世界一革新的な都市として表彰されています。
 また、教育水準は高く、出身国間のいがみ合いや文化的軋轢も少ないとされています。治安も良く街の清潔感を含め、ブラジル他都市とは大きく異なる雰囲気があるのが特徴です。ブラジル南部は全体的に第一次産業、第二次産業のバランスがとても良く開発されているおり、特にクリティーバは環境と人に焦点を置いた政策で、経済発展と自然のバランスをとりつつも「人と環境に優しい」街づくりをしています。
【中西部】

■ゴイアース州

中西部の主要都市は、ゴイアース州連邦区である、首都ブラジリアです。ブラジリアの開発は綿密な計画のもとに行われており、計画人口は約50万人、市街地が無秩序に拡大しないように、当初より増大する人口の受け皿としていくつかの衛星都市が設定されていました。現在は、サマンバイア、パラノアーを含む11の衛星都市があります。
ブラジリアは主だった経済活動はなく、農業は政府援助政策をもとに年々発展しているが、工業は、住宅用のレンガ、セメントなどの建築資材が生産されている程度です。政府系の都市という事もあり、ブラジル中央銀行本部を始め、ブラジル銀行、その他主要な伯国銀行、外資銀行ではシティバンクなどの支店・事務所がある。

 

 

投資規制

ブラジルでは、一般的に外国資本は外資法(「外国資本及び海外送金に関する法律 4131/62号および4390/64号」)、また、行政命令(Decree第55762号)によって規定されています。
ここでの外国資本の定義は“初期外国為替支出を伴わず、経済活動で使用するための資金をブラジル国内に持ち込み、機械または装置を用いた任意の物品の生産および·サービスの提供を目的とする、海外に居住または法人化された個人や法人“とあります。外資法においては、以下の産業について原則として外資による参入が禁止・制限されています。

■禁止業種

以下の4つの業種に対する外国直接投資は禁止されています。
・核エネルギー開発関連事業
・保健医療・健康サービス事業
・郵便、電報事業
・航空宇宙産業

■規制業種

外国投資法ガイドライン33号(Calendário Brasileiro de Exposições e Feiras 2012 33 Legal Guide for Foreign Investors in Brazil)によると、特定の業種に関して、外国資本企業や外国人が一定割合以上の出資を行うことを規制されています。上記の禁止業種、下記の規制業種については、国営事業と位置付ける事業活動や、ブラジル経済における戦略的重要性が高いとされる事業活動が該当します。
規制される業種と規制の内容は、以下のとおりです。

法令第6839号(Lei 6839/80、1980年8月30日付)によると、「専門職者が第三者にサービスを提供する活動あるいはそれに関連した活動を行う場合には、当該専門職者の営業を監査する権限を持つ評議会に、企業と資格を有する責任者を登録する義務がある」と規定されています。
評議会に登録する責任者については、定款上の役員である必要はないとされていますが、事前に該当する評議会等に詳細な条件とあわせて確認することをお勧めいたします。該当する専門職種とは、病院・診療所・歯科医院・薬局などの医療関係、建設業、会計事務所、不動産業、化学製品産業、ペット事業、観光業、スポーツクラブ等となっています。

■資本金に関する規制

最低資本金に関しては法律上の規制はありませんが、外国人駐在員が赴任し、永住ビザを取得する場合、永住ビザ1件につき60万レアルの資本金が払い込まれている必要があります。その他のビザについては、資本金の規制はありません。
また、例外として、投資登録後2年以内に10名以上のブラジル人従業員を雇用する計画がある場合、10万レアルの資本金で永住ビザを申請することが可能です。

■外国為替規制

[送金規制]
ブラジルにおける外国投資法ガイドライン32号(Calendário Brasileiro de Exposições e Feiras 2012 32 Legal Guide for Foreign Investors in Brazil)によると、利益の送金に制限は無く、海外利益の分配と送金に関する法律にも適用されません。ブラジルに本社を置く企業や株主へ分配される配当金・利益を海外に送金する場合でも、課税されません。ただし、1996年1月1日以前に記録された利益・もしくはそこから派生したものは除かれます。
ブラジル企業が外国企業にロイヤリティを送金する場合は、ブラジル中央銀行を通じて支払いを行わなければなりません。技術提供契約、技術援助契約、専門技術サービス等に対するロイヤリティの送金に関しては、事前に契約内容をブラジル国家工業所有権院(INPI)へ登録しておく必要があります。ロイヤリティの送金額については、売上における送金可能な割合が設定されており、事前にINPIへの確認が必要となります。また、送金にかかる送金税(IOF)として0.38%など、様々な税金がかかります。
[本国送還規制]
上記利益送金、資本の本国送還を行う場合、ブラジルへ投資を行った際と同様に、ブラジル中央銀行の電子式システムSISBACENの申告システムRDE-IEDを介して、送金の登録を行う必要があります。中央銀行に登録された外資登録金額に基づいてなされるため、相当する金額が中央銀行に登録されていない場合、国外向け送金に対して制限を受けることになります。
ブラジル中央銀行に登録されている外国資本の本国送還は、事前承認等は必要ありません。非居住者の投資としてブラジルの中央銀行に外資登録されている外貨は、源泉所得税の対象にはならず送還されますが、元の外資登録を超える外貨の金額(キャピタルゲイン)に関しては、源泉所得税の対象となり税率15%が課されます。

■その他の規制

[土地所有に対する規制]
法令第5709号によると、外国に居住する外国人、外資企業によるブラジルの土地所有は禁止されていますが、ブラジルに居住する外国人、ブラジルにて登記されている外資企業については、土地所有が許可されています。各自治体国土の所有可能面積は25%まで、更に同一国籍の複数個人・法人の所有可能面積は40%までと規定されています。この条件は、上記条件に該当する外国人、外資企業に限らず、全てにおいて適用されます。
一方、外国人、外資企業のみに適用される規制として、国境から250キロ以内の土地、海岸に面した土地、国防上重要とされる地域の土地所有の禁止が設定されています。ちなみに、都市部において土地所有に対する制限・規制はありません。

 

 

投資規制とインセンティブ

ブラジル国内において、連邦レベルでのインセンティブは外国資本とブラジル資本とで大きな差異はありません。投資に対する促進機関として、ブラジル輸出投資振興庁(Apex Brasil:AssociacaoInternacional de Programacao Existencial)、マナウス・フリーゾーン監督庁(SUFRAMA:Superintendencia da Zona Franca deManaus)、 アマゾン地方開発監督庁( SUDAM:Superintendenciado Desenvolvimento da Amazonia)や 北東部開発監督庁( SUDENE)があり、それぞれの管理監督において、斡旋している 投資インセンティブが異なります。これらは主に低開発地域の雇用創出や産業育成を目的としており、中小企業に対して初期投資の助成金援助や融資を行っています。

連邦レベルのインセンティブには、特定地域開発の観点から設けられている優遇措置と、特定産業の発展の観点から設けられている優遇措置があります。以下、この2つの観点から考察していきます。

 

 

■特定地域投資支援

特定地域投資支援における地域別優遇措置は、主にマナウス・フリーゾーン、アマゾン地域、北東地域の3地域に区分されます。詳しい内容は以下の通りです。

http://wiki-investment.com/Adminpanel/userfiles/30(9).png

 

[マナウス・フリーゾーン(ZFM)]

ブラジルでは、外資系企業誘致による国内産業の発展を促進しており、地方開発と結びつけたフリーゾーンの設置が行われています。このうち、マナウス・フリーゾーン(ZFM)には、製造業を主とする日系企業も多数進出し、成功しているフリーゾーンの一つといえます。マナウス・フリーゾーンに立地する企業の主な事業は、海外から部品を輸入して完成品を組み立て、主にブラジル国内向けに販売するというビジネスモデルに基づいて行われています。

奨励業種に関しては、特に外資、内資は区別されていません。情報通信関連、航空機産業関連、自動車産業関連には、仮想保税工場システム(RECOF制度)と呼ばれる輸出入向け製品に関する特別措置があります。

下記の優遇措置の多くはブラジル産業技術開発計画(PDTI)に基づいています。企業は当該計画に基づくプロジェクトを開始する前に、産業開発特別事務局(SDI)を通じて産業開発諮問委員会(CDI)宛に伺書を提出し、会社情報、事業目的等の詳細について、説明を行う必要があります。CDIの承認が下りたのち、企業はプロジェクトを遂行することになります。

 

税制上の優遇措置

マナウス・フリーゾーン監督庁(SUFRAMA)から認可を与えられた企業に対して、以下の恩典が与えられます。

 

(1)法人所得税(IPRJ)の免税

マナウス・フリーゾーン監督庁における申請手続きを行った企業に対して、課税所得に対する法人所得税が免税、課税所得に対する社会分担金(CSLL)負担率9%のうち25%が免税されます。

ちなみに、法人所得税は通常月額2万レアル(年額24万レアル)以下の利益額に15%、月額2万レアルを超える利益額(年額24万レアル以上の部分)については25%が課税されます。

 

(2)輸入税(II)の免除

マナウス・フリーゾーン監督庁にて認可を受けたプロジェクトである場合、ブラジルに輸入される外国商品や生産物、製造プロジェクト、設備投資や製造工程で使用される消費財などに対して課税される輸入税が免除されます。また、同機関にてプロジェクト認可を受けているマナウスの中間財メーカーから、完成品製造のために輸入部品を購入した場合も、同様に免除となります。

ただし、認可工業プロジェクトを行う同地域の法人が、フリーゾーンから製品を持ち出す場合は、輸入原料、部品等の輸入税に対して最大で88%免除、例外として四輪、トラクターおよびその部品、情報機器については、免税率の算出に対して国産化率に基づく計算式(CRA=[国産材料費+直接人件費]/[国産材料費+輸入材料費+直接人件費])が適用されます。 また、情報産業関連機器、車両製造については、労働コストを含めた国産化率による免税が適用されます。

 

(3)工業製品税(IPI)の免除

マナウス・フリーゾーン監督庁にて認可を受けたプロジェクトである場合、工業製品ごとに定められている付加価値税である工業製品税が、製造、輸入、国産商品購入ともに100%免除されます。また、マナウス・フリーゾーンによる認可プロジェクトとして製造された工業製品の移出の際の工業製品税も免除の対象となります。

 

(4)商品流通サービス税(ICMS)の減免措置

商品流通サービス税は州ごとに異なる付加価値税ですが、フリーゾーンにおける生産を目的として部品等を輸入した場合や、製造に使用される機械などの固定資産を搬入する場合には免税となります。また、完成品を出荷する際は、通常のICMS税率が55〜100%減免されます。商品流通サービス税は州税であり、減免措置の享受にはアマゾナス州企画・経済開発庁(SEPLAN)内に設置されている開発審議会(CODAM)の認可が必要となります。一般完成品の還付率は原則として55%ですが、製造製品ごとに同州審議会より許可が下りるため、製品によりその減免率は異なります。詳細はアマゾナス州の州法2826/2003にICMSの税制恩典に記載されています。

 

(5)社会統合計画・社会保険融資負担金(PIS/CONFIS)の減免措置

社会保障関連税であるPISおよびCONFISは、正確には税金とは少し異なりますが、企業の負担金として連邦国税庁が徴収監督を行うことになっている税金の一種です。部品などを輸入する際の課税は免税となり、輸入部品等を使って生産した完成品を出荷する際には通常の合計税率9.25%が条件によって下記の通り減免されます。

 

・搬出先がマナウス・フリーゾーン内の企業の場合は3.65%減免

・搬出先がフリーゾーン外の場合は3.65%減免

・PIS/CONFISの非累積課税方式が適用される企業の場合は3.65%減免

・累積課税方式が適用される企業の場合は7.3%減免

 

(6)サービス税(ISS)

サービス提供受取対価に対して課税される間接税の一種であるサービス税については、マナウス市が承認する企画に関するサービスを提供する企業に対して、マナウス市サービス税(5%~10%) が免除されます。

 

(7)流通サービス税(ICMS)

州によってそれぞれ定められている付加価値税であるICMSは、55%減税~100%減税(免税)となります。

 

[アマゾン地域]

アマゾン地域はブラジル国土の60%を占め、アクレ州、アマパー州、アマゾナス州、マト・グロッソ州、パラー州、ロンドニア州、ロライマ州、トカンチンス州の各州、およびマラニョン州の一部が該当します。この地域においては国家統合省管轄下のアマゾン開発監督庁(SUDAM) が地域優遇措置を管理しています。

アマゾン地域の優遇措置を受けるためには、企業はまずアマゾン開発監督庁宛に会社登記書類、プロジェクトにかかる書類等を提出し、プロジェクトの概要を説明する必要があります。そちらをもとに、特別プログラムとして適格か否かの審査を当局に要請します。要請が認められると3~4カ月後に正式な審査が行われます。審査に対し、将来的なファイナンス計画や製造費用、技術並びにマーケティングの詳細等について正確な内容をまとめた資料を提出する必要があります。なお、アマゾン開発監督庁がプロジェクトを承認するのは、審査開始から通常は約6カ月後となります。

 

税制上の優遇措置

アマゾン開発監督庁から認可を与えられたプロジェクトを実施する法人に対しては、以下の恩典が与えられます。

 

(1)法人所得税(IPRJ)の減免措置

アマゾン開発監督庁管轄のアマゾン流域地域への投資事業に対して、事業所得に対する法人所得税の課税が、10年間免除、もしくは減税されます。また、工業設備の更新や増設、新規事業プロジェクトの立ち上げを行う場合、それらの稼働から10年間は、更新、増設、新規プロジェクトから発生した所得に対する法人所得税も免税、もしくは減税されます。

しかし、1997年法改正後の1998年以降に許可されたプロジェクトについては、免税では無く減税のみの恩典となっており、また、2014年以降は、法人税の恩典が廃止される予定となっています。

暫定措置令2058/00号によると、2000年1月1日~2013年12月31日の期間に承認・登録されたプロジェクトで、新規実施・拡張・設備更新などを行う法人に対しては、稼働より10年間は75%の所得税減税措置が適用されます。

 

(2)流通サービス税(ICMS)の減税措置

州によってそれぞれ定められているため、減免率は州や商品の種類によって個別に設定されています。減税の適用には、アマゾン開発監督庁の認可が必要となります。

 

(3)商船更新追加税(AFRMM)の免除措置

海上貨物の場合、通常は輸入時に商船更新追加税(AFRMM)として海上運賃の25%が課税されますが、アマゾン開発監督庁の評価を受けることにより、免除恩典を受けることができます。2010年12月30日付暫定措置令517号によれば、この恩典は2015年12月31日まで適用の余地があります。

 

[北東地域]

北東部開発庁(SUDENE)には、マラニョン州、セアラー州、ピアウイ州、リオグランデドノルチ州、パライーバ州、ペルナンブッコ州、アラゴアス州、セルジッペ州、バイーア州、エスピリト州・サント州の各州、およびミナスジェライス州北部地域が含まれます。現在は経済発展という点では立ち遅れ気味ですが、今後連邦政府によって政策的な産業振興等が図られることが期待されています。

 

税制上の優遇措置

北東部開発庁から認可を与えられたプロジェクトを実施する法人に対する税制上の優遇措置については、上述のアマゾン開発監督庁アマゾン地域と同様の恩典となります。また、北東部開発庁が地域優先分野として設定している事業分野に関しては、法律に基づいた形での公表がされていません。

 

【その他の優遇措置】

サンパウロ州およびリオデジャネイロ州においても、投資の際における州税および市税上の優遇措置を受けることが可能です。両州の優遇措置の詳細、適用条件、適用可否については、すべて州政府との個別交渉となっています。

 

■特定産業投資支援

特定産業投資支援における産業別優遇措置は、ブラジル産業における国際的な競争力の強化、貿易拡大および産業発展という観点から、情報通信関連事業、自動車産業関連事業および技術革新関連事業に関する措置として、以下のように定められています。

 

産業別優遇措置の種類は以下の通りです。

 

  • 半導体産業支援プログラム(PADIS)
  • デジタルテレビ装置産業の技術発展支援プログラム(PATVD)
  • インフラ投資プログラム(REIDI)
  • 技術インセンティブ(TI)
  • 自動車産業のインセンティブ

 

【半導体産業支援プログラム(PADIS)およびデジタルテレビ装置産業の技術発展支援プログラム(PATVD)】

半導体産業支援プログラム(PADIS)およびデジタルテレビ装置産業の技術発展支援プログラム(PATVD)については、以下表の優遇措置となります。PADISおよびPATVDは法律11484/2007(LEI Nº 11.484, DE 31 DE MAIO DE 2007)にて定められています。同プラグラムは、半導体のデザインを含むIC生産行程を行う法人、IC製造を含む液晶パネル、プラズマパネル、LEDの製造を行う法人や、デジタルTVチューナーの製造を行う法人などが該当します。

 

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しかし、上記の優遇措置を受けるための条件および期間はそれぞれ異なり、下記の表の通りになります。

 

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また、PADISおよびPATVDによる優遇措置を受けた企業は、毎年7月31日までにインセンティブに関する報告書を作成し、科学技術省へ提出する必要があります。(法律11484号7条、18条)。

 

【インフラ投資プログラム(REIDI)】

インフラ投資プログラムに対する特別税制恩典(REIDI)は、法律11488./2007(LEI Nº 11.488, DE 15 DE JUNHO DE 2007.)にて定められ、インフラ投資、プロジェクトの建設や工事を行う法人に対して与えられます。運輸事業(高速道路、鉄道、水路、都市交通システム、港湾)、電力事業(水力、風力、原子力、太陽発電)、公衆衛生事業、農業水利事業を行う際に、固定資産に使用される新たな機械、装置、建材、提供したサービス、設備における国内取得、輸入に係るPIS/COFINS税が優遇されます。

 

上記の優遇措置を受けるためには、当該事業の許可の取得および連邦国税庁からのCNPJ(税務登記番号)を取得し、許認可を取得する必要があります。

これらの要件を満たせば、事業の許可取得から5年間、通常税率9.25%が免除されます。

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【技術インセンティブ(TI)】

技術インセンティブは、法律11196/2005(LEI Nº 11.196, DE 21 DE NOVEMBRO DE 2005.)にて定められ、研究開発および技術発展の促進を目的とした、ハイテク産業に係わる企業が該当される優遇措置となります。大学や技術研究所などの研究機関との共同開発も含め、技術開発投資を行う法人に対して、法人所得税などの恩典が与えられます。恩典の有効期限は条件によって異なりますので注意が必要です。優遇措置を享受するためには、連邦国税庁からのCNPJ(税務登記番号)取得と研究プログラム、技術発展・技術革新の内容に係わる情報提供、科学技術省の認可取得などが必要になります。

 

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■その他の奨励措置

[情報通信法による奨励措置]

2004年の法律第11077号(情報法、Lei de Informatica)で改正された情報通信法によると、情報産業法(法律8248号、法律10.176/01にて制定)に基づき、ブラジルで製造された情報機器にかかる工業製品税(IPI)の免除および減税を定めています。これはマナウス・フリーゾーン監督庁でも同様の奨励措置となります。

減税率は2004年1月1日以降、2014年末までは80%、2015年末まで75%、2019年末までは70%の減税となります。また2010年12月30日付暫定措置令517号によれば、ブラジル国内にて開発された情報機器についての減税率は2014年末までは100%となり、2015年末までは90%、2019年末までは70%減税と定められています。

この優遇措置を受けるためには、2014年12月31日までの投資条件として、企業はブラジル国内における情報機器の販売・サービスに係る国内売上高から、一定額を差し引いた金額の4%を毎年ブラジル国内で行われる情報技術分野の研究開発活動に投資する必要があります。

また、上記国内売上高の1.84%以上は次に規定される条件のもと、協定等により科学技術省の指定を受けた教育機関あるいは研究機関に対し投資しなければならないとされています。

 

1)中西部およびアマゾン地方開発監督庁(SUDAM)・北東部開発監督庁(SUDENE)管轄地方の機関に売上高の0.64%以上を投資すること

2)その他の地域の機関に対し売上高の0.8%以上を投資すること

3)全国科学技術開発基金(FNDCT)へ売上高の0.4%以上を投資すること

 

ただし、ブラジル中西部、北部、北東部に設立を希望する企業に対しては工業製品税の減税率、研究開発投資の条件が異なります。工業製品税の減税率に関して、2003年12月31日までは免除が定められていましたが、2004年~2014年末は95%、2015年末までは90%、2016~2019年末は85%となります。

 

 

参考文献

・ IMF World Economic Outlook Database, October 2012
・ The World Economic Forum『The Global Competitiveness Report 2011-2012』
・ 『A EVOLUCAO DA CLASSE MEDIA E O SEU IMPACTO NO VAREJO2012』
・ JETRO
・ 都築慎一著(ブラジル日本商工会議所事務局)『ブラジルの税を知る』
・ JBIC『ブラジルの投資環境』
IBRAM
MONDAQ
JICA
・ 在日ブラジル商業会議所 
・ ブラジル開発商工省
・ マ ナウス・フリーゾーン監督庁(SUFRAMA)
・ Minesterio da Integrancao Nacional 
・ ブラジル政府『Legal Guide for Foreign Investors in Brazi』
・ 三菱東京UFJ 銀行『ブラジル投資ガイドライン』
・ 岡三証券『ブラジル経済の基礎知識 2011 年4 月版』(発行年月:2011/07)