第2章 南アフリカ-投資環境

投資環境

ビジネス環境の現状2014

■ビジネス環境の現状2016(アンケート)より

世界銀行と国際金融公社(IFC)が、2015年10月に「ビジネス環境の現状2016」を共同で発表しています。このアンケートから世界の南アフリカの評価を見ていきます。南アフリカは、このランキングの総合順位が189の国と地域中73位で、「事業の開始」「建設許可の手続き」「契約の履行」といった項目で大幅にランクを下げ、2015年の総合順位43位から30ランク下げました。
経済発展が期待されているサブサハラの各国、ナイジェリア(169位)、ケニア(108位)などにくらべて高いランキングとなっていまが、BRICSの次なる新興国とされるメキシコ(38位)、トルコ(55位)などに比べると低いランクと評価されています。
2016年のランキングで、南アフリカが総合順位より、高いランキングがついた項目は、「資金調達」「投資家の保護」「税金の支払い」「事業の撤退」の4項目です。

 

金融(株式)市場

■金融(株式)市場

ヨハネスブルグ証券取引所(JSE :Johannesburg  Securities Exchange)はイギリスの植民地時代の1887年設立された歴史ある証券取引所で、アフリカ最大の証券市場です。2014年1月時点の時価総額が8,955億USドル、上場企業数397社となっており、モスクワやシンガポールを上回り世界で19位の市場規模です。また、株式以外にも、株式デリバティブ、商品デリバティブなどの市場を運営しています。
株価は、世界経済の停滞にもかかわらずの好調を維持してきましたが、2014年下期からやや低調に推移していると見られています。

 

為替レート

■為替レート
南アフリカランドは2014年1月に2008年以来の安値をつけ、その後もランド安が続き、2016年1月に1USドル=17.9ランドの最安値を記録、対円でも同月に最安値をつけています。
この数年の新興国市場の低迷を受けて2008年より政策金利は段階的に引き下げられてきましたが、通貨安とインフレ懸念により、2014年1月5年半ぶりに0.5%引き上げられ5.5%に、その後も段階的に引き上げられ2016年1月に6.75%となりました。
国際的には、中国の景気減速や、米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和を縮小したことによる、新興国市場への投資意欲の減退への警戒感があり、国内では、鉱山・建設労働組合連合(AMCU)による賃上げ要求のストライキが長引いたこともランド安の一因と言われています。
急激なランドは輸出競争をが高める一方、外国投資資金へ不安定要因をさらに拡大することとなり、引き続き注視が必要です。
なお、2016年1月29日現在の為替レートは、1USドル=16.2ランドです(OANDA「Forex Trading and Exchange Rates Services」)。

 

外国直接投資額

■外国直接投資額(FDI)
南アフリカ経済は、リーマンショックと欧州財務危機による経済の低迷の影響を受けて停滞気味に推移したものの、やはり外国直接投資先として世界中から注目されていることには変わりません。
旧宗主国であるイギリスやオランダとは経済的なつながりが非常に深いため、外国直接投資額を国・地域別で見ると、イギリスが45%、オランダが18%と群を抜いています。しかし、近年は急速に中国からの投資が増していますし、日本からの投資もトヨタのカローラ生産ラインへの投資など大型案件が続いています。今後は、アフリカ諸国からの投資も含め投資国の多様化が進むものと見られています。
セクター別には、金融・保険分野と鉱山開発が多く、製造業を大きく上回っているのが特徴的です。日本からは、発電設備を中心としたインフラ投資が盛んになっています。

 

インフラ

■インフラ
世界経済フォーラムが行っている、「世界競争力レポート(The Global Competitiveness Report)2015-2016」によると、南アフリカのインフラの総合評価は140カ国中59位です。BRICSの各国は、中国51位、インド74位、ロシア64位、ブラジル123位となっており、中国と並んで高いランクにあります。また、モロッコ55位、ケニア63位、ナイジェリア133位とアフリカではランクに開きがあり、南アフリカは上位に位置します。
各インフラの評価は、道路34位、鉄道42位、港湾36位、空港14位、電力116位、固定電話90位、携帯電話22位となっています。2010 年の FIFA ワールドカップを契機に急速な経済成長とインフラ整備があり、輸送インフラは比較的整っているものの、電力供給に課題があるとされています。

■鉄道

南アフリカは世界で12番目に長い鉄道路線を有する国で、地下資源の輸出には内陸にある鉱山から外洋に面した積出港へ専用貨物路線によるバルク輸送が行われています。石炭の産地であるエルメロからインド洋に面したリチャーズベイまで、鉄鉱石鉱山があるシシェンから大西洋に面したサルダナまでの数百キロにわたる専用路線がそれにあたります。
一般貨物は、最大都市のヨハネスブルグと南アフリカ最大の港湾ダーバンを結ぶ路線では年間1,400 万トンが鉄道輸送されています。しかし、ヨハネスブルグ ― ダーバン間は年間3,350 万トンが道路輸送されており、鉄道輸送の倍以上を占めます。これには、鉄道輸送において、メンテナンス不良による故障や盗難などによる遅延、ターミナルでの荷扱い効率の悪さなどのより、輸送日数が長いうえに不確実であるという理由があります。
南アフリカ政府は、輸送・移動手段の多元化を目指しており、既存インフラのメンテナンスと近代化、新規設備の投資を促進しており、その一環として鉄道輸送の強化が進められています。貨物輸送を担うTransnet Freight Rail(TFR)が全国の運行状況をリアルタイムでモニタリングできるオペレーション・センターを設立し、コンテナ貨物基地や新たな環状路線の整備、ダーバンに新設中のコンテナ専用港からの鉄道輸送インフラ整備などが進められており、一般貨物、特にコンテナ輸送力が飛躍的に増強される見通しです。
また、大都市圏の近郊列車は2010年のサッカーワールドカップを機に整備が進み、ヨハネスブルグ―プレトリア、ダーバン、ケープタウンの都市圏には全長2,228kmにおよぶ路線が整備されています。

■道路

南アフリカの主要都市間は舗装された国道で結ばれており、ヨハネスブルグ、ダーバン、ケープタウンなどの都市間には高速道路が整備されています。2010年に行われたサッカーのワールドカップ開催を機に一層の整備が進んだこともあり、サブサハラでは群を抜いた道路整備状況であると言えます。
一般貨物輸送は、鉄道よりも道路輸送が圧倒的に多いため、物流インフラの重要な位置を占めます。また、主要都市間の人の移動は、富裕層が航空機、低所得者層は長距離バスやミニバスといった住み分けが行われてきました。しかし、中所得者層が飛躍的に拡大するなか、自家用車の普及が進んでおり、移動手段としての道路インフラの重要性は増しています。
経済発展による物流の増加と、自家用車の普及によって、ヨハネスブルグ~プレトリアなど大都市部では渋滞が問題となっています。近郊鉄道などの公共交通網の整備が進んでいるものの、さらなる総合的な都市交通整備が必要と言われています。

■港湾

南アフリカには、ダーバン、ポート・エリザベス、ケープタウン、クーハなどの大型港湾があります。その他、世界最大の石炭積み出し港であるチャーリーズベイ、鉄鉱石の積出港であるサルダナなどの資源輸出に特化した港湾もあり、これら港湾施設は南アフリカの輸送インフラの要となっています。
ダーバン港は、サブサハラ最大の港湾で、年間コンテナ取扱高は263 万TEU(2013年)で、南アフリカのコンテナ取扱高の6割以上を占めます。経済成長による輸出入量の増加、最大都市ヨハネスブルグから500kmに位置する物流の要衝であること、世界的自動車メーカーが生産拠点を設けていること、などの背景から、ダーバン港の貨物需要は急激に増えています。また、南部アフリカのゲートウェイとしての役割も重要視されるようになりました。
南アフリカ政府は、国家開発計画によって戦略的プロジェクトの1つとして、ダーバン港の拡張と新港建設を位置付けています。短期的には港湾の拡張作業を優先課題とし、中期的には、旧国際空港跡地に新港を建設するプロジェクトが進められることとなっています。港湾運営を一手に担う国営企業であるトランスネット社はダーバンの貨物取扱キャパが2,000 万TEU以上になるものと予測しています。

■空港

南アフリカは航空ネットワークが発達しており、空港インフラは比較的整っていると言えます。主要国際空港の旅客数は、経済発展に伴う物流や人の移動の増加により、旅客、貨物ともに増加傾向にあります。
ヨハネスブルグのOR タンボ国際空港は、年間1900万人の旅客が利用する大空港で、航空貨物の取扱高もアフリカでトップクラスです。ヨハネスブルグは、欧州やアメリカの主要都市を初めとして世界中の都市に就航する南部アフリカの中心的な空港で、アフリカの多くの国の主要都市とも就航があります。国内ではケープタウンやダーバンなどの主要都市と頻回のフライトで結ばれています。
ダーバンには、空軍施設と供用であったダーバン国際空港にかわって、2010年にキング・シャカ国際空港が開港し、年間5百万近い旅客数が利用するようになりました。

■電力

南アフリカでは、経済成長にともない電力需要が急増しています。しかし、過去20年にわたり電力インフラへの投資が滞っていたことにより、電力供給が追いつかない状態が続いています。2030年には電力需要が2010年の倍になるとの予測もあり、電力供給を増加・安定させることは、南アフリカ経済の喫緊の優先課題と言えます。
南アフリカ政府は、2010年に長期的なエネルギー政策として統合型資源計画(IRP: Integrated Resources Plan)を発表しています。この計画にもとづき、停止状態にあった発電所の再稼働、既存設備の増強、新規発電所建設、送電網の延長、変電所の建設などを行い、電力設備容量を2010年の 4 万 4,000MWから、2030 年までに8万 5,000MWに引き上げるとしています。また、未電化地域の電化を推進することとなっています。
電力公社ESKOMは、南アフリカの電力の 95%を発電しています。エネルギー源は、国内で豊富に産出される石炭による火力発電に依存しており、供給電力の約9割を占めます。しかし、エネルギー源の多様化に取り組んでおり、2013年、2014年に原子力発電所が続けて稼働しました。さらに、Kusile とMedupiの石炭火力発電所、Ingulaには揚水発電所が建設中です。Escomは、これらの新規施設と既存の発電所の設備増強も含めて、2019 年までに発電容量は17,120MW増加すると発表しています。

■通信

携帯電話は21世紀に入って急速に普及し、2014年には149.2%になりました。イギリスのVodafone系、CellC、MTNの3社に加え、2010年にはテルコムが参入して4社体制となっています。各社ともに3Gサービスを提供しており、iPhoneやBlackBerryなどのスマートフォンが導入さています。携帯電話の普及にともない、固定電話は10%以下の普及率となっています。
南アフリカでのインターネットの普及率は5割と高く、固定ブロードバンドが全国で利用可能となっています。近年はモバイル端末によるインターネット利用が急増していると言われています。

 

日系企業の進出状況

■日系企業の進出状況
近年、日系企業の進出がさかんなアフリカにあって、南アフリカはケニア、エジプト、モロッコなどとくらべ突出して多くの分野の企業が多数進出をしています。経済規模が大きく、産業構造に厚みがあり、内需の拡大が目覚ましい南アフリカは進出する魅力のある国です。近年は、今後ますます拡大すると見られるサブサハラ経済のゲートウェイを視野に入れた進出も増えていると見られます。
主な進出分野として、まず南アフリカの主要産業である鉱業があります。住友商事、伊藤忠、三菱商事などの商社が共同出資するなどして多数の鉱山開発に参加しています。豊富な地下資源の開発は、欧米のみならず世界中からの進出が競合する予断をゆるさない市場となっています。
次に、インフラ関連事業があります。特に、南アフリカの喫緊の課題である発電事業は設備需要が高く、日立製作所による石炭発電所設備の案件が展開されているほか、住友商事や伊藤忠独立など日系の商社がESKOM以外の独立発電事業者(IPP)と進めている再生可能エネルギープロジェクトが注目されています。インフラ関連事業には、もう一つの目玉として今後飛躍的に伸びるとされる鉄道設備があります。南アフリカ国営貨物輸送公社(TRANSNET)への電気機関車供給などを三井物産と東芝が共同で進めています。
さらに、自動車産業の進出状況が注目されています。南アフリカには世界の主要メーカー7社がすでに進出をして現地生産をしています。日系メーカーとしては、トヨタ自動車と日産自動車などダーバンやプレトリアなどで生産ラインを稼働させています。また、デンソーやブリジストンなど自動車関連企業もあいついで現地生産開始、トヨタはアフリカ最大級となる補給部品供給センター開設しました。これら部品供給体制を含めた現地生産・調達推進は、今後はサブサハラのマーケット拡大も視野に入れられたものと見られています。

 

2.参考文献

・世界銀行 
・世界経済フォーラム(World Economic Forum)
・アフリカ開発銀行(African Development Bank Group)
アフリカ開発銀行 アジア代表事務所
・South African Reserve Bank(南アフリカ準備銀行)
・南アフリカ電力公社(ESKOM)
・在南アフリカ共和国日本国大使館
・経済産業省 
・独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
 ・公益財団法人 国際通貨研究所
月刊 資本市場  
・独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO)
・MOL Logistics
 ・世界通信情報事情
・bloomberg   
「JALSH:IND FTSE/JSE アフリカ 全株指数」
・Sockmarketmaps.com 
・第一生命経済研究所 マクロ経済分析レポート
・野村証券
・外為ドットコム
・OANDA