シンガポールの滞在許可
■シンガポールの滞在許可
滞在許可(Stay permit)にはいくつか種類がありますが、以下の通り、就労が許可されるものとそうでないものに分類することができます。
1.就労が許可されるもの
・エンプロイメント・パス(企業管理者用就労許可:EP)
・パーソナライズド・エンプロイメント・パス(高額所得者用EP)
・エス・パス(専門職員用就労許可:SP)
・ワーク・パーミット(日本人には発行不可:WP)
2.就労が許可されないもの
・短期訪問許可(Short-term visit pass:STVP)
・長期訪問許可(Long-term visit pass:LTVP)
・配偶者許可(Dependant pass:DP)
・学生ビザ(Student pass)
このうち、日本人を含めた多くの外国人に対して最も頻繁に発行されるのが、短期訪問許可(Short-term visit pass:STVP)という、いわゆる観光ビザに当たる滞在許可です。
分類としてはビザ・オン・アライバル(=アライバル・ビザ)に相当し、特に手続きすることなく入国カードに情報を記載する(またはオンラインで情報を入力しておく)ことで入国時に発行されますので、STVPが発行されたという認識がない場合がほとんどだと思います。
以下にこのSTVPの条件を列挙します:
・滞在が許可される期間は30日
・就労は不可
・出張としてビジネスパートナーと面会する程度の接触は許されるが、商談は厳禁
・延長は最大で89日まで可能だが、現地人(シンガポール国籍/永住権保持者)が保証人となってオンラインで手続きする必要がある
・一時出国の後にとんぼ返りするだけでも滞在可能期間はまた30日とリセットされるが、頻繁に繰り返すと「就労しているのではないか」と尋問を受ける
また、上記就労が許可されないものとして挙げた滞在許可の中でもLTVPとDPに関しては就労の可能性があります。
具体的には、EPオンラインというサイトに各企業のアカウント(CorpPass)でログインし、当該滞在許可を持つ個人の情報を入力して、就労許可書(Letter of consent:LOC)を発行すれば、就労が可能になります。
ただし、LTVPについては、その目的が子女の就学を補助するためであったり、家族の入院付き添いであったりする場合、LOCの発行はできません。
■特殊な滞在許可➀
上記滞在許可の他にも、シンガポールでの就労に関しては以下のような許可が存在します。
1.就労許可免除活動(Activities for a pass exemption)
シンガポールでの就労は、原則として就労ビザに当たるEPやS-Passなどの就労許可を取得する必要がありますが、いくつかの専門的活動に関しては、申請等必要としない活動として就労許可が免除されています。
許可免除活動は以下の通りです:
・仲裁活動(宗教・人種・政治に関する係争を除く)
・展示活動(ただし、展示のテーマとなる物品の販売、情報の一般公示等には登録が必要、またステージショーや設営・飲食物提供などには別途就労許可が必要)
・報道活動(政府機関その他に許可された対象のみ)
・シンガポール国際商事裁判所への出廷(同裁判所により命を受けた場合)
・賭博場の斡旋活動(Junket:富裕者をシンガポール賭博場に案内、宿泊施設などを手配すること)
・映画撮影・ファッションショー(個人に対する撮影サービスを除き、ロケ地としてシンガポールを利用する活動)
・公演(政府機関その他公認のイベントに、アーティストまたはスタッフとして参加する場合の活動)
・新規特殊設備関連活動(新規工場などの施設における設備の検査・設営・修理等の実務ないし指導。ただし販売、製造、改装を除く)
・セミナー・会議等(スピーカー、ファシリテーター、トレーナーとして参加する場合。ただし、物品・サービスの提供や宗教・人種・政治に関するものを除く)
・スポーツ(政府機関その他公認のイベントに選手・コーチ・審判・補助人員として参加する場合。ただし、シンガポールのスポーツ団体に所属する場合を除く)
・観光プロモーション(団体旅行の斡旋などとしてホテルへの声掛けや入国手続きを行う場合。ガイド活動には就労許可が必要)
また、以下の条件がつけられます:
・シンガポール入国前に当該活動に従事していること
・シンガポール入国後、当該活動開始前に人的資源省(MOM)に通知を行うこと
・シンガポール国内で当該活動を行うために必要な法的要求を網羅していること
・当該活動中シンガポール滞在のための短期滞在許可(Short-term visit pass: STVP)を発行されていること
注意が必要なのは、この就労許可免除活動には、シンガポール滞在自体を許可する内容は含まれておらず、単に就労を許可するだけであるという点です。
就労自体は年間で合計90日可能となりますが、その申請自体、他の滞在許可によってシンガポール滞在が確保されている期間内でしか実行できません。
既にシンガポールに滞在している状態で、他の就労許可なく上記活動に従事できる日数が、年間90日あると理解することができます。
シンガポールの就労許可
■外国人労働許可(Work Pass)
原則として、シンガポールで就労する外国人は全員、管理・専門職向けの雇用許可(Employment Pass)、専門職向けの就労許可(S-Pass)、低技能向け労働許可(Work Permit)のいずれかを申請しなければなりません。Work Permitは特定の国出身の外国人に限られ、日本人はEmployment PassまたはS-Passのいずれかを選択することになります。
いずれの就業許可も、企業がシンガポール人的資源省(Ministry of Manpower:MOM)に申請を行って許可を得、発行を受けます。
■Employment Pass (EP) ~管理・専門職向け就労許可書
管理・専門職向けの雇用許可書は、月給が4,500Sドルを超える外国人が対象になります。
雇用許可書の申請に当たっては、シンガポール政府が認知した大学の卒業資格を有していることが原則的な申請資格要件となります。雇用許可書およびS Passの自己査定ツールをウェブサイト上(https://services.mom.gov.sg/sat/satservlet)で提供しており、申請に先立ち自己査定の実施を課しています。
申請はEP Onlineというポータルサイトで行われます。各企業はCorpPassと呼ばれるログインIDを取得してポータルサイトにログイン、その後必要情報を入力して手続きします。
対象外国人の学歴証明書、およびパスポートのコピーの提出が求められますが、こちらはスキャン画像であるPDFやJPEGのファイルをアップロードして提出することになります。
料金支払いを行って申請を完了すると、約3週間ほどで結果が通知されます。
MOMの判定が可であれば、暫定許可証として原則的承認In-Principal Approval(IPA)と呼ばれる書類がダウンロードできます。
この許可書は入国許可ともなり、日本人とは違ってシンガポール入国にビザが必要な国の外国人でも、IPAをもって入国が許可されます。
の有効期限内(6ヶ月)にシンガポールへ入国し、入国カード(Disembarkation Card)を取得した後、住居を決めると、カード発行申請を行うことができます。
支払いの後、申請が完了すると、アポイントを取って顔写真と指紋の登録を行うよう指示があります。
顔写真・指紋の登録の後、7日ほどでカードが配達されます。
Employment Passの有効期限は最大2年間で、更新時は最高5年間まで付与されます。申請が却下された場合、1ヶ月以内であれば再申請を行うことが可能です。この場合、申請者の技能の説明や、雇用者がこの申請者を必要としている旨、どのような貢献ができるのか等をMOMに文書で説明するよう求められます。
■S-Pass~中級レベルの熟練労働者向け許可書
S-Passは、最低基本月給が2,400Sドル以上であること、高等専門学校と同等の学歴・技術資格の保有者であること、関連の実務経験があること等が申請資格となります。前述の雇用許可書よりも下位の許可書としての位置付けとなります。
申請方法や条件はほぼEPと同じですが、S-Passの申請には人数制限があり、申請には一定数のシンガポール人、または永住権(Permanent Residence:PR)をもつ外国人の従業員を雇用している必要があります。
この人数はクォータ(Quota)と呼ばれ、MOMのサイトで確認できます。
■Work Permit~低技能向け労働許可証
Work Permitは、外国人労働者のための労働許可証です。許可証の中では低所得者向けになります。
指定された国からの外国人に対し、一定のシンガポール人、または永住権を持つ外国人を雇用いていることを条件に、申請して許可されればはっこうされるものです。
S Pass、労働許可証ともに労働者数を管理するために毎月の 外国人雇用税、技能開発課徴金の支払が義務付けられています。
■Personalized Employment Pass(PEP)
以前は上記の各種許可書の保有者が離職した場合は、シンガポールから出国しなければなりませんでした。そこで許可書保有者が離職した場合でも引き続きシンガポールで就労できるよう、 個人雇用許可書( PEP:Personalized Employment Pass)という制度が導入されました。この制度により、許可書の保有者が離職した後も、シンガポールに引き続き滞在し(最長6ヶ月)、新たな就職先を探すことが可能になりました。
■DP保持者の就労
DP保持者の就労環境
就労許可EPを発行されて就労する外国人の配偶者として、DP(Dependant Pass)で滞在する外国人については、従来企業側がLOC(Letter of Consent)を申請、発行することにより就労が許可されていましたが、2021年5月1日から、このLOCの申請・発行ができなくなりました。
従来は、永住権PRを持つ現地採用以外では、EPなど高額の月給を支払うことでしか採用できない外国人従業員が多い中で、パートタイム雇用や期間雇用で柔軟な働き方が許される点、特に駐在員の配偶者として滞在するDP保持者は、日系企業でも重宝される存在でした。
今後は個別にEP/S-Passを取得しなければならない(※)ということで、従前のような自由な働き方が許されなくなりました。
※2022年4月までは移行期間として、通常日本人には発行されないWork Permitへの切り替えが行えることになっており、ある程度時間の区切られた低賃金の雇用でも雇用できるとされています。
また、既に発行されているLOCについては、その有効期限が到来するまでの期間中は、従前の雇用条件で働くことができるとされています。
許可されない就労の形態
原則として、シンガポール国内の企業に価値を提供する仕事をすることは、雇用契約か業務委託契約かを問わず、就労許可がなければ一切許されません。
これは、大きくは政府が保護すべき内国人であるシンガポール国籍/永住権保持者の就業機会が奪われないようにするため、シンガポール内国人では提供できない役務を提供する外国人のみに国内での就労を許可する、という原則に沿った動きと言えます。
従って、フリーランサーとして業務委託を受ける活動、日本で給与を受け取る雇用、また給与を受け取らないボランティアのような働き方などは、通常の雇用とは異なる形ではありますが、シンガポール内国人の就労機会を減らす可能性がある点で、いずれも許可されません。
違反が見つかった場合、本人のDP、配偶者のEPだけでなく、EP保持者の雇用主である企業が責任を負い、2年間EP申請等が禁止される可能性もあるため、注意が必要です。
DP保持者に許可される活動
DP保持者が行うことのできる活動として、以下の条件全てに符合する雇用があります:
1.シンガポールに滞在する外国人が、海外の企業で従業員として働くこと
2.海外の法人が、シンガポールにある会社と法的に別個の企業であり、従業員の業務がシンガポールのビジネスにとって、何ら影響を及ぼす活動ではないこと
3.外国人がシンガポール国内で顧客と面談したり、役務提供したりしないこと
端的に言えば、外国企業はその活動がグループ企業などを介してシンガポールでの役務提供とならない限り、そこで雇用される人間が国内の就労機会を奪うことにならないため、国内の企業等に付加価値をもたらす役務を提供しないのであれば、シンガポール国内で遠隔勤務することは可能、ということになります。
なお、上記は同時に、EPその他の就労許可を発行されてシンガポール法人で働く外国人が、兼任の形で業務を提供することのできる範囲でもあります。
DP保持者の納税義務
LOCを発行されて就労する場合、DP保持者は他の就労許可保持者と同じように、毎年翌年の4月15日までに確定申告を行い、個人所得税を納税することが求められていました。
今後、LOC発行ができなくなると、DP保持者には上述のような、シンガポール国外の企業での雇用しか許可されなくなりますが、その場合は任意申告(Voluntary Declaration)の制度を使って、個人所得税を申告・納税することになります。
申告は、個人が所得を申告する場合と同じく、シンガポール税務当局IRASのポータルサイト、myTax Portalにログインして行います。
また、就労期間が60日未満であったり、年間収入がSGD6,000以下であるような場合は、申告の義務がなくなります。
こちらは、シンガポール国内の口座に給与が振り込まれるか、外国の口座で給与を受け取るかによっては変わらず、シンガポールで滞在しながら役務を提供した時点で、全額シンガポール個人所得税の課税所得となるため、注意が必要です。
■外国人労働者雇用法
シンガポールは、労働力不足を補うために外国人労働者を積極的に受け入れる政策をとっています。 外国人労働者雇用法は、外国人労働者を制限する趣旨ではなく、外国人労働者の福祉や、有効な就労ビザの保持など外国人労働者の保護を目的として制定された法律です。もちろん規制もされ、就労ビザを持たない外国人労働者の就労は禁止されています。この法律に違反した雇用に対しては罰金または禁固、もしくはその両方が科されます。
外国人就労許可申請方法
コロナの影響で企業活動が縮小する中、外国人が行っていた仕事を内国人(シンガポール国籍/永住権保持者)に分け与える方針で政治的コントロールを行ってきたシンガポールでは、2020年9月から極端に就労許可手続きが難化しています。
コロナ感染拡大防止措置も合わさって、複雑な手続きになりがちな就労許可、特にEP(Employment Pass)取得手続きについて、今回はまとめてお伝えします。
手続き概要
まず、就労許可取得のためには、元々就労するべき外国人に相応の学歴、経験、専門性と職位が与えられなければならないルールでした。
更に、その外国人招聘の理由の正当化のため、国内で同様の人材が確保できないことの証明として、一定期間の求人広告掲載が義務付けられていました。
2020年9月以降は、最低給与額が引き上げられ、更に10月からは上記求人広告掲載の期間が4週間以上と定められました。
これにより、例えば日本本社からシンガポールで勤務することが望まれる人材につき、現在は以下のような手続きを踏む流れとなっています:
1.採用対象者の属性確定(年齢、学歴、専門性、職務経験、職位)
2.採用対象者の給与額確定(Self-Assessment Toolを実行)
3.採用広告の作成、掲載(my Careers Future上での掲載、4週間)
4.採用面接の実施(上記3.の期間中、できれば毎週実施)
5.就労許可申請(myMOM Portalのサイトで実施)
6.仮承認(IPA)の取得(通常申請後2週間~3週間で結果通知)
7.IPAへの署名(スキャン対応可、原本は持参する)
8.当該外国人のシンガポール入国(コロナ対策に対応、隔離滞在2週間)
9.就労許可発行手続き(myMOM Portalで実行)
10.指紋・顔写真登録(事前にアポイント取得が必要)
11.カード受け取り(上記10.の登録手続きから概ね1週間後)
なお、上記3.と4.の広告活動は、従業員数が10人以上の会社のみが対象とされ、9人以下の会社では必ずしも実行する必要はありませんが、時間があれば実行すると、より手続きがスムーズになると考えられます。
以下、詳述します。
1.採用対象者の属性確定(年齢、学歴、専門性、職務経験、職位)
シンガポールでは、伝統的に優秀な外国人人材を自国で囲い込む方針を持っていました。
基準としては、一定の年齢になればそれに相応しい職務経験、専門性、給与を得て、相応しい職位に着いている必要がある、と考えられています。
最も問題となるのは下記に見る給与金額ですが、一般に公募をすることを念頭に、どのような専門性の求められる仕事であるか、その属性を確定する作業が必要になります。
2.採用対象者の給与額確定(Self-Assessment Toolを実行)
次に、対象者の給与額を合格水準以上に設定します。
こちらは、以下の政府公式サイト内にあるオンラインサービス、Self-Assessment Toolを用いて足切りラインを調べることができます:
https://www.mom.gov.sg/eservices/services/employment-s-pass-self-assessment-tool
月額固定金額として会社が負担するものであればよいため、母国側支給分や各種固定手当の金額、場合によっては家賃負担分を本人に手当として支給することにして、調整を図ります。
こちらの金額は、年額にして個人所得税の納付金額と直接的に関わる数字となるため、不確実な金額は許されず、変動制の賞与や、滞在期間中の享受分が変動することのある会社負担の家賃等については、固定の月額給与額(Gross Monthly Salary)に組み入れられないことに注意が必要です。
3.採用広告の作成、掲載(my Careers Future上での掲載、4週間)
続いて、確定した内容に基づいて、採用広告を作成、掲載します。
基本的には、以下のサイト、myCareers futureに、Job Descriptionを作成して掲載し、そこから4週間掲載を行うことになります:
https://employer.mycareersfuture.gov.sg/
この際、雇用を希望するポジションについて、正確に情報を記載するのはもちろんのこと、シンガポールにおいて忌避される差別的条件や、極端に難しい要件は、記載しない方がいいでしょう。
なお、以下の場合は採用広告掲載の義務が免除されます:
・従業員数が10名未満である
・採用予定のポストの給与が月額S$20,000以上である
・1か月未満の短期就労である
・国内の関係会社からの転籍である
・国際経済協定に基づく海外出向(Intra-Corporate Transferee)である
4.採用面接の実施(上記3.の期間中、できれば毎週実施)
公募を行っていると、例え条件に当てはまっていなくとも、数多くの人が履歴書を投稿してきます。
個人の概要や履歴書を見ながら、Application Statusを操作していき、全く当てはまらない場合は「Unsuccessful」、面接の価値があると思われる応募者には「To Interview」とする要領で、ショートリストしていきます。
基本的には不満を訴える人がいる場合ですが、あまりにも長い間操作をせずにいると、担当当局のWorkforce Singaporeから電話が来て、早く会社の判断を反映するよう迫られます。
従って、目安としては、毎週候補者を確認し、ショートリストするだけでなく、実際にメールで日程を確保して面接を実行することが理想的です。
期間が4週間あるため、その人数は平均毎週2人程度でも構いませんが、面接する場合には、具体的に会社が必要としている人物像を話し、人種や言語で差別したと言われない程度に高い要求を突き付けて、よりよい応募者がいたらそちらを採るのでそのつもりでいてほしい、と伝えるのがよいと考えられます。
5.就労許可申請(myMOM Portalのサイトで実施)
上記4.の採用面接が行われ、3.の広告期間が終了したら、その広告時に割り振られたmyCareers Future上のIDで就労許可の申請をすることができるようになります。
広告については、シンガポール人、永住権保持者、その他外国人の別に、それぞれ何人と面接し、何人断ったか、どのような理由で断ったかも、記載することになります。
申請完了前にパスポート、および学歴証明書のスキャン画像を提出し、申請料S$105を支払うことになる点、注意が必要です。
6.仮承認(IPA)の取得(通常申請後2週間~3週間で結果通知)
申請の後、3週間以内に結果が通知されます。
あらかじめ雇用者側の情報として入力しておいたメールアドレスに通知が来るもので、問題がなければ仮承認(In-Principle Approval:IPA)が発行されます。
一方、当局MOMが判断して、内国人でも人材の確保が可能だと理解された職位については、追加書類を要求されたり、一旦却下という形でRejection(不許可)が下されることがあります。
その場合、MOMの指示または理由に沿って必要書類を準備し、追加書類の提出、または不許可への対抗意見を述べることができます。
一旦追加書類の要求や不許可判定が出ると、それに対するアクションに対しても最大で3週間の待機期間が生じるため、注意が必要です。
7.IPAへの署名(スキャン対応可、原本は持参する)
上記IPAには、Declaration Form(宣誓書)が添付されており、対象の外国人人材、会社代表者のそれぞれに署名のページが割り当てられています。
会社代表者については、会社印を押印することが必要になる点、注意が必要です。
まずはスキャン画像を用意して下記の9.就労許可発行手続きに備え、その後、原本をそろえて下記の10.指紋・顔写真登録へ向かうことになります。
8.当該外国人のシンガポール入国(コロナ対策に対応、隔離滞在2週間)
入国は、現在以下のプロセスを経て行われます:
・入国許可申請
・PCR検査予約(シンガポール到着時用)
・出発前PCR検査
・オンライン入国カード記入
・フライトPCR(検査シンガポール到着時)
・ホテル隔離
・PCR検査(ホテル隔離滞在終了前)
会社の側で手続きが可能な申請内容ばかりでなく、外国人人材本人が行わなければならないPCR検査や入国カード記入などが含まれる点、注意が必要です。
また、外国人人材は就労許可入手前であってもシンガポールのSIMカードをもって手続きする必要があり、こちらを調達することも、会社側の責任になります。
9.就労許可発行手続き(myMOM Portalで実行)
外国人人材が入国したら、その入国カードの情報でもって、就労許可発行手続きを行うことができます。
手続きにはS$255.00の支払いが求められ、そののちに発行されるNotification Letter(カード発行通知)によって、就労が許可されるようになります。
ただし、このNotification Letterは有効期限2週間の限定的なものであり、この期間中に下記の10.指紋・顔写真登録を実行する必要がある点に注意が必要です。
特に、現在はまだ上記8.の隔離滞在2週間が継続しているため、こちらの期間を待たずに発行手続きをしてしまうと、指紋・顔写真登録まで時間がなくなってしまうため、ある程度待ってから手続きすることに留意しましょう。
10.指紋・顔写真登録(事前にアポイント取得が必要)
上記9.の工程を終えると、下記のサイトにFIN番号などを入力してアポイントを取得することが可能になります:
https://service2.mom.gov.sg/appointment/Default.aspx?action=Make
基本的には書類の提出、指紋・顔写真の登録だけで、早ければ5分もかからず終わる手続きですが、この書類に不備があると、後日再び出向くように言われるため注意が必要です。
具体的には、IPA、Declaration Letter、Notification Letter、Appointment Letterのすべてをプリントアウトし、Declaration Letterについては各人の署名、押印した原本を所持することが求められます。
11.カード受け取り(上記10.の登録手続きから概ね1週間後)
上記9.の発行手続きの時点で登録した配達住所に、指定した受取り手宛てに配達が行われます。
前日または前々日に通知があり、上記10.の登録手続きから4~5営業日後の日付で、多くは14:00から18:00に配達される、と記載されています。
しかし、ところにより配達の時間はバラバラで、早いときは午前中になり、電話がかかってくることも多いので注意が必要です。
帯同家族居住許可書:DPについて
就労許可としてEP、またはS-Passを所持している外国人人材は、その月額所得がS$6,000を下回らないことを条件として、配偶者および子女をシンガポールに帯同することが許可されます。
この帯同家族に発行されるのがDP(Dependant Pass)で、現在EP Onlineのサイトで申請が可能です。
(ゆくゆくは他のすべての手続きと合わせてmyMOM Portalのサイトに移行予定)
配偶者の場合の手続き:
1.必要書類(パスポートの画像データ、戸籍謄本原本、領事証明申請書原本、委任状原本)の回収
2.在星日本大使館における婚姻証明書の発行(予約~申請~受取で約2週間)
3.DP申請(EP Onlineにて実行)
4.IPA発行(通常、上記3.DP申請から1日~7日)
5.配偶者の入国~隔離滞在
6.DP発行手続き
7.指紋・顔写真登録(事前にアポイント取得が必要)
8.カード受け取り(上記7.の登録手続きから概ね1週間後)
上記のうち、4.のIPA発行以降は概ね就労許可申請手続きと同じであるため、上記1.~3.の注意点に絞って注釈します。
・必要書類のうち、パスポートの画像についてはメールなどでデータを受領すれば事足りますが、戸籍謄本原本、領事証明申請書原本、委任状原本については原本を回収する必要があります。
・事前に就労許可保持者の外国人人材本人に、以下のリンク先からダウンロードできるフォーム(1. 証明書発給申請書、および5. 委任状の2点)に記入を依頼し、書類を回収しておくことが効率的です:
https://www.sg.emb-japan.go.jp/itpr_ja/ryoji_shoumei_shussei.html
・在星日本大使館における婚姻証明書の発行手続きは、上記リンク先の日本領事館ページにある通りですが、受け取りの際、手数料がS$15.00、現金で必要です。
・DP申請に際しては、配偶者の最終学歴とシンガポールにおける就学の意志の有無、現在の収入の多寡などを記入することになるため、正確に把握しておく必要があります。
子女の場合の手続き(21歳未満のみ):
1.必要書類(パスポートの画像データ、戸籍謄本原本、領事証明申請書原本、委任状原本)の回収
2.在星日本大使館における出産証明書の発行(予約~申請~受取で約2週間)
3.母国の医療機関におけるワクチン証明書、専用フォームの回収(12歳以下の子供のみ)
4.シンガポール当局HPBにおけるワクチン証明書申請、取得(約3週間)
https://www.nir.hpb.gov.sg/fcine/#/
5.DP申請(EP Onlineにて実行)
6.IPA発行(通常、上記3.DP申請から1日~7日)
7.子女の入国~隔離滞在(2週間)
8.DP発行手続き
9.指紋・顔写真登録(事前にアポイント取得が必要)
10.カード受け取り(上記7.の登録手続きから概ね1週間後)
上記のうち、1.~2.および5.~10.の手続きは概ね上記配偶者向けDP申請手続きと同じであるため、上記3.~4.の注意点に絞って注釈します。
・専用フォームは以下のサイト中、「Download Immunisation Registration Form」というボタンをクリックしてダウンロードします:
https://www.nir.hpb.gov.sg/fcine/#/
・上記、同じリンク先から登録/ログインを行い、対象子女のワクチン接種状況を入力する画面に入ります。対象子女が接種済みのワクチンについて、一つ一つ記入していきます。
コラム:シンガポールで出生!DP取得までの手続きまとめ!
出生直後は自動で滞在資格付与
シンガポールの病院で出生すると、その子供がシンガポール国籍を取得することになっている場合を除いて、必ず病院から以下の書類がもらえることになっています:
・Notification of Live Birth
・Advisory Note
こちらの管轄はシンガポール入国管理局(Immigration and Checkpoints Authority:ICA)です。
こちらの書類はそのまま新生児の特別滞在許可(Special Pass)としても用いられ、有効期限は6週間、42日となります。
その間に、シンガポールでの手続きをすべて完了させることになりますが、万が一間に合わない場合には、オンラインで申請して期間の延長を願い出ることになります:
https://form.gov.sg/#!/5e8b297f2cb1270011786544
大使館で自国の手続き
次に、シンガポールにある日本の大使館・領事館で、国籍の取得までを実行します。
血統主義であるシンガポールでは、日本人同士の子供にシンガポールの国籍が付与されることはないため、自動的に日本国籍になります。
そのため、最悪遅くなっても国籍が剥奪されることはありませんが、生まれた日から3か月以内に届け出るというルールは遵守したほうがいいでしょう。
手続きとしては、上記Special Passに当たる書類を両親のパスポートと併せて持ち込み、出生届を記入して提出します。
出生届の提出を受けると、大使館は外務省を通じて日本の両親の本籍地に出生届を送付、本籍地への登録を進めます。
戸籍への登録手続きには通常1か月近くかかるため、注意が必要です。
こちらの手続きが終わると、出生証明書(Certificate of Registration of Birth)が発行されます。
パスポートは一般の申請
戸籍への登録が完了したら、パスポートの申請に入ります。
在シンガポール日本大使館での申請になりますが、必要書類は以下の通りです:
(1)一般旅券発給申請書×1
(2)戸籍謄本又は抄本(新生児が記載されたもの)×1
(3)写真(縦45ミリメートル、横35ミリメートル)×1
(4)その他参考となる書類(両親のパスポートなど、求められれば)
このうち、一般旅券発給申請書はオンラインで作成できる様式になっており、申請書を埋めてプリントアウトします:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/download/top.html
署名欄は代筆で実行することになります。
2021年現在、新生児の場合のパスポート発行手数料はSGD77.00とされています。
DPのために必要な書類
パスポートが発行されたら、シンガポールでの配偶者滞在許可DPの申請に必要な書類はそろったことになります。
2021年現在、EPOL上での申請が必要ですが、必要な書類は以下の通りです:
・パスポート(画像のみ)
・出生証明書(Certificate of Registration of Birth)
申請料はSGD105.00、発行手数料はSGD255.00となります。
ほとんどのケースで翌日には仮承認のIPAが下りるため、以上の手続きが滞りなく進めば、特別滞在許可(Special Pass)の有効期限内にDPを取得することができるでしょう。
参照:
人的資源省:https://www.mom.gov.sg/
シンガポール入国管理局:https://www.ica.gov.sg/