第1章 バングラデシュ-基礎知識

基礎知識

■ 正式国名 ➡ バングラデシュ人民共和国

英語名:People’s Republic of Bangladesh
ベンガル語名:গণপ্রজাতন্ত্রী বাংলাদেশ
バングラデシュという国名の由来は、ベンガル語で、バングラが「ベンガル人」、デシュが「国」を意味し、あわせて「ベンガル人の国」という意味を表します。

■ 国旗

バングラデシュの国旗は、緑地に赤い丸が描かれています。緑は豊かな大地、赤い丸は独立のために流された血を表しています。赤い丸が、中央よりやや左に寄っているのが特徴です。

■ 面積・国土 ➡ 1474,000㎢(日本の約3分の1)

バングラデシュは、インド亜大陸の最東端に位置しています。周囲のほとんどがインドに囲まれ、南東部はミャンマーに接しています。ガンジス川(パドマ川)、ブラマプトラ川(ジャムナ川)、メグナ川というアジア有数の3つの大河が国土を流れています。そのため、豊かな土壌を有すると同時に、雨季には大規模な洪水も多く発生します。

■ 首都 ➡ ダッカ(英語名: Dhaka)

バングラデシュの首都でありダッカ県の首府を兼ねます。人口は1,188万人(2011年、統計局推定値)、近郊を含む都市圏人口は1,400万人を超えるといわれており(国際連合推計)、世界有数の人口過密都市です。

■ 気候

バングラデシュの気候は熱帯性で、年間を通じての気温の変化が比較的少なく、一年を通じて温暖な気候となっています。3月から6月にかけては高温多湿な時期が続き、特に蒸し暑く感じます。5月から10月は雨季で、年間の降雨量の大半はこの時期に集中します。

■ 時差 ➡ -3時間(UTC:+6:00)

日本との時差は、-3時間で、日本の正午がバングラデシュの午前9時です。サマータイムの導入はありません。

■ 人口 ➡ 約163,046,000人(出展:国連経済社会事務局、2019年時点)

バングラデシュの総人口は、国連経済社会局によると、約1億6,304万人(2019年時点)であり、世界8位の人口大国とされています。前年の2018年と比較すると1.0%人口が増加したことになります。2015年では出征数が死亡数を約230万人上回りましたが、総人口ペースでは増加が190万人程に留まっています。これは国外への移民が年間に40万人程いたことを表しています。また、国連の人口推計によると、2050年には2億人を突破すると予想されています。
(出所:国連経済社会局)
人種別では、ベンガル人が人口の98%を占めています。その他に、ビハール州などインド各地を出身とする非ベンガル人が2%を占めています。

■ 言語

バングラデシュの公用語はベンガル語です。ベンガル語はバングラデシュとインドの一部で使用されていて、14の母音と29個の子音で構成されます。イスラムでは珍しく、アラビア文字ではなく、ベンガル文字が使用されています。また、ベンガル語に加えて英語も官公庁や教育機関では使用されています。しかし、ベンガル人のアイデンティティであるベンガル語を公用語とする運動が勃発したという歴史があるように、バングラデシュ人のベンガル語に対する思いは非常に強いといわれています。

■ 通貨

バングラデシュの通貨はタカ(Taka、略称:Tk)です。ISOコードではBDTと表示されます。また補助通貨としてパイサが使われ、1タカ=100パイサです。紙幣は1タカ、2タカ、5タカ、10タカ、20タカ、50タカ、100タカ、500タカ、1,000タカの9種類があり、硬貨は5パイサ、10パイサ、25パイサ、50パイサ、1タカ、2タカ、5タカの7種類があります。このうち5タカから1,000タカまでの紙幣はバングラデシュ銀行が発行していますが、それ以外の2つの紙幣と硬貨はバングラデシュ政府が発行しています。為替レートは、1円≒0.76タカ(2019年10月現在)となっています。

■ 宗教

バングラデシュの国教はイスラム教であり、2017年、国民の約88.4%がイスラム教で、ヒンドゥー教は全体の約11%、残り少数をキリスト教(カトリック)と仏教が占めるとされています。またごく少数ですが、バングラデシュの東部に位置するコックス・バザール周辺にはロヒンギャと呼ばれるミャンマーのラカイン州からの難民が進行するイスラム教も存在します。その数は正規の難民としてバングラデシュに移住しているのが32,000人程、20万~50万人程が移民として流入してきているとのデータもあります。
このようにバングラデシュの主流宗教はイスラム教の為、バングラデシュ全土には多くのモスクがあり、アザーンという礼拝の呼び掛けが一日に5度、市内に響き渡ります。また、イスラム教で禁止されている豚肉やお酒はバングラデシュ国内ではほとんど手に入れることはできません。一流ホテルを除けば、レストランでもお酒を提供していません。
また、ミャンマーとの国境近くの街にいけば、仏教徒が多く住んでおり、仏教寺院を見ることができます。
しかし、大多数がイスラム教徒を占める同国でも、宗教多様性に関しては理解があり、他宗教を尊重しながら共生しています。祝日の中に、クリスマス(キリスト教の祭日)やドゥルガプジャ(ヒンドゥー教の祭日)が含まれていることからも、お互いを尊重する文化であることが見て取れます。

■ 教育制度

バングラデシュでは、小学校5年、中学校5年、高校2年、大学4年という制度を採用しています。一般教養課程の他に、マドラサ教育(イスラム学校)も認めています。マドラサでは、一般科目に加えてイスラム教についての教養、哲学を勉強する時間も設けられています。
また、2017年のUNESCOの統計によると識字率は下図のように、15歳以上男性で75.7%、女性で70.09%となっており、全体で約72.89%の識字率となっています。また若年層と65歳以上の識字率の差を見てわかるように、近年では教育に重点が置かれ飛躍的に改善されています。さらに、若年層では女性の識字率の方が高くなっており、社会的マイノリティといわれる女性への政策に重点が置かれているのもわかります。

■ バングラデシュの近代歴史

バングラデシュの近代歴史は1.英領時代、2.東パキスタン時代、3.独立後、と大きく3つに分けられます。
[英領時代~東パキスタン]18世紀末にイギリスの東インド会社により植民地化され、英領時代が始まりました。当時イギリスの植民地政策の重要な1つの柱が、植民地をいくつかのグループに分ける「分割統治」という政策でした。これにより住民が団結をするのを防ぐという趣旨があります。英領インドでも、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒を分ける方法が取られ、1905年にベンガル分割令が発布されると、ヒンドゥー教徒中心の西ベンガルとイスラム教徒中心の東ベンガルに分割されました。その後、1947年に英領インドは独立を果たしますが、宗教間で激しい衝突が起き、100万人以上の犠牲者が出たといわれています。その結果、ヒンドゥー教地域はインド、イスラム教地域はパキスタンとして分離独立し、東ベンガルはパキスタンに参加し、東パキスタンとなります。
[東パキスタン時代~独立]両パキスタンはインドから独立を果たしたものの、東西パキスタンの共通点はイスラム教国家であるという点だけで、地理的に1,000km以上離れているだけでなく、歴史や文化、言語の違いがあり、徐々に対立が生じていきます。独立後の軍事政権は、中央政府が置かれている西パキスタンの開発に力を入れたことから、経済格差が生じたのに加え、西の言語であるウルドゥー語を公用語とすることを決定したため東の反発を招きます。軍事政権は東の反発を力で抑えていたものの、民政移管が行われた1970年の総選挙では、人口に勝る東側のアワミ連盟が勝利します。軍事政権はこれを認めず、アワミ連盟の首脳を逮捕します。東はこれに対抗し暴動やストライキが起き、1971年3月に一方的に独立を宣言します。軍事政権はこれを抑えるべく東へ軍隊を派遣し、戦争が開始されました。インドが戦争に介入することで、西パキスタンは敗北し、東パキスタンの独立を認めます。その結果、「ベンガル人の国」という意味を持つバングラデシュとして、独立しました。
[独立後~現在]バングラデシュは独立を果たしますが、順調とはいきませんでした。政治は腐敗し、度重なる軍事クーデターが発生、首脳の暗殺が繰り返されました。独立後最初の首相であるシェイク・ムジブル・ラーマン(2015年10月現在首相であるシェイク・ハシナ氏の父)は1975年家族とともに暗殺され、軍事政権による統治が行われます。その後1990年に民主化運動が活発となり、当時のエルシャド政権は倒れ、1991年に総選挙が行われました。以後民主的な選挙が行われ、バングラデシュ民族主義党とアワミ連盟の2大政党が交互に政権を担当してきています。ただ、この間にも、政党間対立により社会経済が混乱することもあり、腐敗した政治の改革が不可欠であると考えられています。一方、経済は順調に成長を続けており、シェイク・ハシナ首相は2021年までに中所得国入りを目標とする「ビジョン2021」の達成のために経済開発、汚職撲滅に取り組んでいます。

■ 政治体制

政体:共和制元首 :アブドル・ハミド大統領
政府 :シェイク・ハシナ首相
国会 一院制、定員350名
議員の任期は5年で、350議席のうち50議席は小選挙区制による政党ごとの得票率に応じて女性議員が選ばれることになっています。
主な政党はBNP(バングラデシュ民族主義党)、アワミ連盟、国民党、イスラム協会(ジャマティ・イスラム)等です。2014年の総選挙では、BNP率いる野党が選挙をボイコットし、シェイク・ハシナ氏率いるアワミ連盟が圧勝。2018年末に行われた総選挙では、選挙前には最大野党であるBNPの党首を汚職罪で収監し、また野党支持者・候補者を相次いで逮捕し、弱体化を図ったうえで、圧勝。新政権が発足しました。

■ 政治・経済動向

独立後に数回のクーデターによる政権転覆を経験したバングラデシュの政治は、近年においても安定しているとは言い難いものでした。2006年1 0月、軍の圧力でカレダ・ジア率いるBNP政権は退陣し、暫定政権が発足しました。2007年1月には総選挙の実施をめぐる混乱から非常事態宣言が出され、政治活動が制限されていた時期もありました。その後、2008年12月には非常事態宣言が解除され、7年ぶりの総選挙が実施されると、アワミ連盟が230議席(得票率48.06%)を獲得し、ハシナ党首を首相とする内閣が誕生しました。その後も二大政党間の対立は続き、デモやゼネスト(ハルタル)、議員の暗殺などがあり、政治の安定が望まれています。それに対して経済は近年好調を維持しています。今や国を代表する産業となった繊維製品の輸出は、大きな収入源となっています。中国やベトナムの賃金上昇により、安価な労働力を持つバングラデシュに外国企業からの投資が集まり、また中東や海外で働くバングラデシュ人からの海外送金もあり、近年は5 ~ 6%の経済成長を維持しています。このような安定した高い経済成長を背景に、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に次ぐ「ネクスト1 1」の新興経済国の1つに位置づけられています。

■ 日・バングラデシュ関係

日本は、バングラデシュが独立した当時、先進国の中で最初にその独立を承認しました。親日的な国民性もあり、友好な関係を維持しています。1972年3月に在日バングラデシュ大使館が開設、同年7月には在バングラデシュ日本大使館が開設されました。両国の最も大きな関係は、日本からのODAです。バングラデシュにとって日本は最大のODA国であり、同国内最大のジョムナ橋やチッタゴン・シャージラル国際空港などの建設を援助し、インフラの乏しい同国にとって重要なパートナーとして認識されています。
経済的な関係をみると、貿易額は年々増えており、対日の輸出額は750百万USドル、輸入額は1,150百万USドルとなっています。バングラデシュからは主に衣料品を輸入し、日本からは自動車部品などを輸出しています。そして、近年はユニクロに代表されるように、バングラデシュに進出する日系企業も増えつつあり、今後もその傾向が続くものと思われます。
また、政治、経済以外にも国費留学生の受け入れや文化無償協力等が実施されています。
バングラデシュに在留する日本人は964人(2018年10月1日現在/外務省HP)となっています。

 

バングラデシュの経済

■ 経済動向
[概要]
バングラデシュの経済は、BRICsに続く、ネクスト1 1の1つと考えられているように非常に注目を集めています。また、チャイナプラスワンの考え方が広がり、日本の企業にも、安価で豊富な労働力がクローズアップされはじめました。
実際に、バングラデシュの経済は近年継続的な発展を遂げています。政治的不安定、貧弱なインフラ、汚職、電力不足、経済改革の実施の遅れという課題があるにもかかわらず、1996年から毎年5 ~ 6パーセントの経済成長を維持して います。
その成長を支えているのは縫製品をはじめとする輸出産業と国外労働者からの送金です。しかし、輸出品の8割が衣料品であり、輸出相手国の8割が欧米であることから、その輸出品と輸出先の多角化が大きな課題になっています。バングラデシュの経済構造の中に組み込まれている海外援助も重要なファクターです。バングラデシュの予算の3割前後が援助資金によって賄われ、その援助資金の配分をめぐって政治が展開されているといわれています。
従って、今後、バングラデシュに進出することを検討する場合には、単純に5 ~ 6%の成長を維持しているから今後も安泰というわけではないということをきちんと認識する必要があります。
ここでは、バングラデシュの経済について財政、GDPの推移、インフレ、貿易の順番に論じ、最後にバングラデシュの主要産業である縫製品産業、次世代産業として期待されている製薬産業、情報通信技術産業(ICT)を取り上げます。
[GDP の推移]
下記にGDPの推移をまとめました。2008-10年に6%を下回ったぐらいで、概ね6%を超えるペースで成長しています。2008 ~09年の成長の鈍化は世界金融危機の影響で輸出が鈍化したためだと考えられています。
バングラデシュが生産している低価格帯の商品は、経済不況下の先進国において、消費者の選好が高級品志向から低価格志向への変化したことにうまくマッチしました。その結果、欧米を中心として輸出が増加したということです。
今後のバングラデシュのGDPの成長率の見込みについては、このまま縫製品の比較優位が続いた場合には、6%強~7%台の安定した成長となると考えられます。しかし、縫製品の比較優位が今後も続くとは考えにくいと思われます。バングラデシュでもパキスタンと類似した問題点があります。それは製造と農業のリンケージです。
つまり、バングラデシュもパキスタンと同様に洪水に悩まされることが多い国です。天災によって農業が打撃を受けて、縫製品を行う為の原材料の調達がうまくいかなかった場合には、原材料価格の上昇とそれに伴う価格の上昇が懸念されます。その場合には低価格という比較優位がなくなります。さらに、2009年から中国で縫製品の輸出規制が撤廃されています。
今後は中国と競争していかなければなりません。したがって、バングラデシュの今後のGDPの成長率を考える上で重要なキーワードは、縫製品ではなく、バングラデシュが育成に力を入れている製薬業や、ICT産業になると考えられます。

■バングラデシュの国家財政

バングラデシュは現在、貧困国の一つとして位置付けられ慢性的な財政赤字に苦しんでいます。以下の財政赤字は海外援助と国内銀行借入で補鎮しており、最近では2/5程を海外借入で賄っている構造となっています。バングラデシュの財政赤字の原因は、政府の徴税能力と、経済に対して人口過多という弱い徴税基盤も影響しています。されに、国営企業の放漫経営に対しての財政上の補鎮も重くのしかかります。
これらの要因が積み重なり、慢性的な財政赤字となっています。政府は税収の確保のため、所得税法改正などの抜本的な税制改革を国会決議しており、毎年6月の予算案には税法改正も盛り込まれています。
経常収支
バングラデシュの経常収支の大きな特徴は、①慢性的な貿易赤字と、それを支える②国外労働者からの送金です。貿易収支は、赤字が続いていて、近年赤字額は拡大をしています。バングラデシュの輸出品は縫製品等の低付加価値製品が中心であり、自動車や電器製品などの高付加価値製品を輸入に頼っていることが原因と考えられます。したがって、電力などのインフラが乏しい現状において、貿易黒字化は非常に難しいといわれています。
この貿易赤字を支えているのが、国外労働者からの送金です。バングラデシュ人は国外で働いて得た収入の多くを国内の家族へ仕送りをするというのが習慣となっています。その額は2018年度149.8億USドル、これはGDP総額の10%程を占めており、国家財政及び内需の下支えをしています。リーマンショックに端を発する世界不況によって多くの国の経済が停滞した2009年~2010年の間に、バングラデシュで大きな落ち込みが見られなかったのは、海外送金により支えられている構造によるところが大きかったと考えられます。
 しかし、この国外労働者からの送金額の上昇は2009年度~2010年度にかけて減少したものの、2011年度からは再び増加傾向になります。2013年の海外送金額は13,832百万USドル(Bureau of Manpower, Employment and Training調べ)となり、国外労働者の多くはサウジアラビアやUAE、クウェートといった中東各国が中心であり(下図参照)、中東各国の経済が下振れした場合には、バングラデシュの経済に大きな打撃を与えることが想定されます。近年の中東の情勢は安定せず、油断できない状態が今後も続くでしょう。
国外労働者の多くはサウジアラビアや、UAE、クウェートといった中東各国、また最近ではマレーシアも中心であり (下図参照)、中東各国の経済が下振れした場合には、バングラデシュの経済に大きな打撃を与えることが想定されます。近年の中東情勢は安定せず、油断できない状態が今後も続くでしょう。
[ 高まるインフレ率と対応策]
発展途上国に共通する課題として、物価上昇の問題があげられます。政府は公式に、バングラデシュ経済の大きな問題は、財政赤字とインフレであるとしています。特にバングラデシュは貧困層の割合が多く、食品などの生活必需品の物価があがることは多くの国民の購買力を害すことになり、社会や政治の不安定をもたらし、深刻な問題を引き起こす可能性があることが指摘されています。バングラデシュ統計局の速報値によると、2011年8月には、11.29%に達しましたが、その後落ち着きを見せ、2017年には5.6%程となっています。

■ 貿易

[ 総論]
バングラデシュでは、継続的な財政赤字が課題となっていますが、その原因が貿易赤字です。バングラデシュの主産業である縫製品は、単価が安い低付加価値製品であるのに対し、自動車や機械、電器製品などの高単価のものを輸入しているため、貿易赤字の解消は難しいと考えられています。貿易総額は徐々に縮小傾向にありますが、2018年度の貿易赤字は162憶USドル(輸出367憶US$、輸入529憶US$)となっています。
[輸出額]
国別輸出額
バングラデシュの主な輸出相手国は欧米各国です。2018年時点での最大の取引相手国はドイツで、48,444憶US$(13.2%)、米国が45,774憶US$(16.1%)、英国、スペイン、フランスの順となっています。
品目別輸出額
品目別でみると、縫製品、主にニット・織物が全体の82%と圧倒的なシェアを占めています。衣類関連以外では、魚介るにの輸出もあることが下図よりわかります。ムスリムは甲殻類を食することが禁止されているため、特にエビについては輸出用に養殖を行っています。また、下図には記載されていませんが、医薬品については2010百万Tk(2019年1月~3月実績)の輸出を行っており、近年生産・輸出が伸びてきています。
[輸入額]
国別輸入額
中国が最大の輸入相手国で、2018年どは約123.3憶US$(22.0%)、続いてインドが7,459憶US$(14.1%)、その後、シンガポール、日本、インドネシアと続きます。近年になってマレーシアからの輸入が急速に伸びてきており、2018年には輸入額で6位までになりました。
品目別輸入額
輸入品目は多岐に渡っており、主力産業である縫製品の原料となる繊維や生綿と、国内では生産が困難な機械、鉄などの金属、生活インフラに必要な石油製品も輸入に頼っていることがわかります。食糧自給率も充実しているため、比較的輸入に占める割合は低いといえます。
繊維産業

バングラデシュの主要産業は、繊維製品をはじめとする繊維産業です。1971年の独立以来、国策として繊維産業の保護促進を行ってきました。現在では、輸出品目の大半を占める等、バングラデシュ経済を牽引する重要な産業となりました。バングラデシュの繊維産業で最も規模が大きい製品はニットです。次に布帛です。2008年ごろまでは布帛が最も規模が大きく輸出量も大きかったのですが布帛の原料は輸入に頼るところが大きかったことが原因です。では、バングラデシュの繊維産業の強みと弱みを需要側、供給側で整理してみます。

まず、需要側の強みは、欧米で確固たるポジションを確立しているという点です。繊維産業に限定すれば、欧米向けの輸出が全体の約9割を占めます。EUにおいて特恵関税に関する原産地規則が緩和されたことや、H&MZARAといった欧州アパレル大手小売の委託生産先としてのポジションが確立されつつあることが大きな要因です。また、概要でも述べましたが先進国の消費者の選好が、高級品から廉価品にシフトしつつあるというのもバングラデシュの繊維産業に追い風になっています。バングラデシュの安価で豊富な労働力を利用してコスト削減を行い、低価格な製品を提供することで、消費者の選好の変化を捉えています。

一方の弱みは、欧米頼みになっているという点です。つまり、欧米の消費者の選好の変化が起きた場合には需要が低迷し、ライバルである中国、インドが欧米市場に対してのアクセスを強めてきた場合には、競争が激化することになります。欧米への一極集中は、将来性という面では不確実性が高いという弱みとなります。この点については、一般特恵関税の恩恵が得られる日本との関係強化を模索する動きもみられます。ユニクロのバングラデシュ進出もあり、日本との関係は強化されていくと予想されています。

次に供給側の強みです。これについては既に述べたとおり、安価で豊富な労働力が真っ先に挙げられますし、輸出にあたっての関税免除も非常に大きな強みです。さらに、以前は生産拠点として工場を設立するグリーンフィールド投資が主流でしたが、バングラデシュでも他の新興国と同様に中間層が増えてきたため、国内での需要増加が見込めるという点も大きな利点です。供給側の弱みは、自国に原材料を持たないことです。自国で原材料を持たないということは原材料を輸入に頼らざるを得ないということになります。つまり、原材料のマーケットの変化、為替の変化等の影響を受け、不安定な状況となります。今のところこのようなリスクは顕在化していません。実際に、2009年の国際的な綿花の高騰の影響でコスト面での負担増加により、輸出が下落すると考えられていましたが、例年並みの輸出量を堅持しました。

しかし、外部環境の変化に対する脆弱性には留意しておく必要があります。また、発展途上国で良く言われるような、インフラの未整備による供給量の制限も弱みです。つまり、人口の増加や、1人当たりGDPが増加したとしても、その需要増を吸収できる供給量の確保ができないと経済規模が大きくなることはありません。水や電力にとどまらず、汚職や補助金の配分争い等による政治の機能不全等も供給側の問題点として認識する必要があります。 

バングラデシュでは繊維製品が産業の大半を占めており、仮に繊維製品の成長が鈍化した場合には、経済を牽引する産業が他にないということになりかねません。したがって、バングラデシュでは繊維製品の次の成長産業として製薬業界とICT業界の育成に力を入れています。

製薬産業

まずバングラデシュの製薬業界の水準は実は低くありません。解熱鎮痛剤から癌の治療薬まで扱っています。また、WHO(世界保健機構)が定める各種の基準をクリアした医薬品を製造しています。バングラデシュでは200社あまりの製薬会社が事業を展開しており、その中の大手製薬会社のレナータはマレーシアやフィリピンなどでも市場開拓を行っています。また、腹痛やガスティック(腹腔内にガスが溜まり、軽い腹痛を引き起こす病気)となることが多く、それに対してアーユルベーダやコピラージではなく、常備薬で対処したり、薬局で医薬品を購入して対応したりする事の方が多く、バングラデシュ国民の中で製薬業界は一つの産業として成り立っており、発展する可能性を秘めています。

また、欧米のメガファーマと呼ばれるNovartis Pharmaceutical FactorySanofi Aventis もバングラデシュに進出しています。これらの企業のターゲットは新しいマーケットとして注目を浴びているBOPBottom of Pyramid)層です。全世界のBOP市場の市場規模は5兆ドルに上ると見られており、そのうちの34,700億ドルをアジアが占めています。バングラデシュはそのうちの1,423億ドルを占めています。今後の人口増加に伴うBOP層及び経済発展によるBOP層を抜け出した中間層の増加を見越しているということです。

日系企業では、2010年に、ロート製薬が販社を設立し、ベトナムで生産したメンソレータムブランドのリップクリーム等を富裕層の女性をターゲットに販売しています。また2011年にはニプロが合弁会社を設立し、血液回路などの医療機器の製造販売を開始しています。

情報通信技術産業

バングラデシュの産業構造の問題点として、繊維産業の割合が高く、縫製品が衰退した場合にはバングラデシュの経済状況も伸び悩みます。したがって、産業構造の多様化という側面からも情報通信技術(ICTInformation and Communications Technology)産業の育成が重要になります。 

また、もうひとつ重要な点として労働者の多様化という点も見逃せません。繊維産業が大部分を占めると言っても、GDPの割合を見るとサービス産業が約半数を占めています。つまり、労働集約的な繊維産業と知識集約的なサービス産業との間で大幅な経済格差が生じているということです。したがって、そのような経済格差を是正するための方策として、ICT産業の振興を目指しているという視点も非常に重要です。さらに欧米からのオフショアの受注も期待できます。インドはオフショア先として有名ですが、人件費の上昇によって、コストプレッシャーがかかり、人件費が安いバングラデシュにも注目が集まる可能性もあります。このような利点に着目し、バングラデシュ政府は建国50周年に向けた「ビジョン21」において、「デジタルバングラデシュ」というスローガンを打ち立て繊維産業の次の産業として育成していく姿勢を鮮明にしています。BASISBangladesh Association of Software and Information Services)の調査によれば、バングラデシュにはIT関連企業が900社以上あり、さらに個人ベースの小規模企業も含めて考えるとそれに数百社加わります。企業の活動自体も積極的でバングラデシュ国内のみならず国際的マーケットでも事業を行っています。国内の市場規模は25千米ドルで、世界全体のソフトウェア産業は3,000億ドルと言われていることから考えると、現段階ではそれほど市場規模は大きいとは言えませんが、マイクロファイナンスを含む金融業界、繊維産業、公共部門を中心に今後ITソリューションへの需要が伸びていくと予想されています。2010年には、BASIS主導でUSバングラデシュテクノロジーサミットという国際会議が開かれました。また、ソフトエクスポという展示会も開催されバングラデシュ企業、外国企業合わせて83の企業が展示会に参加しました。このようなバングラデシュのICT業界の今後の発展を伺わせるニュースも多々あります。インドの次のオフショア先としての可能性に注目が集まります。また、バングラデシュにおける2019年1月時点での全携帯電話加入件数は約161.772百万人あります。ドコモが出資するRobi社も最王手のGrameen Phone社、Banglalink社などとシェア争いをしています。今後は携帯電話そのものだけではなく、携帯電話向けコンテンツ開発にも将来性があると言われています。

 携帯電話加入者数
インフラ工事プロジェクト
バングラデシュ政府は、近年、物理的インフラ(道路、橋梁、その他交通網、電力等)の整備に力を注いでいます。労働力集約型の産業がメインとなるバングラデシュですが、都市の渋滞や、その他陸奥龍雅上手く機能しておらず、莫大な機会損失を出している現状に焦点が当てられ始めました。バングラデシュ予算をみても、2017年度以降、物理インフラ事業への予算配分が少しずつ増えてきています。2017年度予算では約1.27兆BDTでしたが、2018年度予算では、それが約1.46兆BDTへと増加しています。2016年の安倍晋三首相のバングラデシュ訪問では、4~5年のうちに円借款を中心として支援を行うとして声明を発表しており。実際に多くの円借款事業が行われています。2018年6月には2,003憶7,100万円を限界とする円借款貸付契約が締結され、開港事業や、火力発電事業、交通整備事業、鉄道専用橋建設事業等の事業が進められていく事になります。これらのインフラ工事プロジェクトを行うため、各国からから土木・建設工事請負業者や、ロジスティックス・建機リース企業等の関連企業のバングラデシュ進出も目立ってきています。

 

Latest News & Updates

バングラデシュ行政機関の呼び名とその役割】

 

外国企業が使用する行政機関やその他組織の名称、略称、その役割についてまとめました。

 

日本語 正式名称 略称 役割
商業登記所 Registrar of Joint

Stock Companies and

Firms

RJSCB

または

RJSCF

日本の法務局にあたる機関で、EPZ内企業も含め、現地法人の会社登記申請や、役員変更などの登記内容変更は、RJSCBに対して行います。また、現地法人の場合には、年に1度商業登記所に対して事業報告を行う必要があります。
内国歳入庁 National Board of

Revenue

NBR 日本の国税庁にあたる機関です。
税務署 Deputy Commissioner

of Taxes

DCT 日本の税務署にあたる機関です。年次税務申告はDCTが申告先になります。
VATオフィス VAT Office なし 毎月のVAT申告の申請先です。
市役所 City Corporation なし 営業許可証(Trade License)を管理しているのが、City Corporationです。ダッカやチッタゴンなどの都市部以外の地域では、City Corporationの代わりに「Union Porishad」(ユニオンポリショド)という機関がCity Corporationと同じ役割を行っています。
輸出

加工区庁

Bangladesh Export

Processing Zones

Authority

BEPZA EPZ (輸出加工区)内に設立された企業の管理を行っているのが輸出加工区庁です。EPZ内の企業の事業登録、管理、EPZ内企業で働く外国人の就労許可の許認可などを行う機関です。
EPZ

オフィス

EPZ Office 各輸出加工区にある、事務所はアダムジーEPZオフィス、ダッカEPZオフィス、などと呼ばれ、輸出加工区庁本部(BEPZA)と区別されます。
投資庁 Board of Investment BOI BIDAの旧称です。(2016年9月まで)
投資庁/

投資開発庁

Bangladesh Investment Development Authority BIDA 外国投資の管理を行う当局です。EPZ外の企業の事業登録、EPZ外の企業で働く外国人の就労許可の許認可などを行う機関です。支店や駐在員事務所の許認可も、この機関が行っています。
中央銀行 Bangladesh Bank BB 海外送金の許認可申請先です。当局は、外国為替管理を行っており、駐在員・支店を設立した場合の報告や、海外から投資を受けた際の報告も行う必要があります。
商業銀行 Authorized Dealer AD Prime Bank、Brac Bankなど、バングラデシュの商業銀行のことを指します。中央銀行への申請や事業報告などは、全てADを通して行います。
警察 Special Branch SB SB、NSIは、警察庁の出先機関の名称です。SB、NSIを管轄するのがHome Ministryです。外国人は就労許可の取得後にSecurity Clearanceという身元証明書の発行を受ける必要があります。この身元保証書の発行を担当しているのがこの3つの機関です。
警察 National Security

Intelligence

NSI
警察 Home Ministry なし
都市開発庁 Capital Development Authority of

Bangladesh

(Rajdhani Unnayan

Kartripakkha)

RAJUK

 

コマーシャルエリア(商業用地区)の許認可を出している機関です。住宅用住所で事業を行っているレストランや小売店などの取り締まりを行っているのがこの機関です。営業許可証(Trade License)を取得する際には、登録住所がRAJUKから許認可を得た商業用地であるか否かが確認されます。
税関 Custom Office/

Bond Office

なし 輸出入に係る手続きの管理監督、保税倉庫ライセンス(Bond License:ボンドライセンス)の管轄等を行っているのがこの機関です。
輸出入管理庁 Office of Chief

Controller of Imports and Exports

CCI&E IRC(輸入ライセンス)やERC(輸出ライセンス)の管理を行う機関です。
日本バングラデシュ商工会 Japan-Bangladesh Chamber of

Commerce And

Industry

JBCCI こちらは政府機関ではなく、商工会の名称です。輸出入ライセンス(IRC・ERC)を取得する際には、商工会または業界団体への入会が必須のため、ライセンス取得を目的として入会するケースが多いです。なお、JETROが事務局となっているダッカ日本商工会という組織もありますが、こちらは日本企業による任意団体で、JBCCIとは別団体となります。
バングラデシュ縫製品製造業・輸出業者協会 Bangladesh Garment Manufacturers and Exporters Association BGMEA 業界団体の名称です。このほかにも縫製業の業界団体としては、BKMEA(ニットウェア製品製造輸出業者協会)やBTMA(テキスタイル協会)などがあります。

 

 

参考文献

・ 在バングラデシュ日本大使館 Bangladesh Telecommunication Regulatory Commission

・ Bangladesh Software and IT Service Industry 

・ 専門調査員報告書『バングラデシュ経済の現状と課題-輸出、海外直接投資(FDI)、

海外労働者送金を中心に-』在バングラデシュ日本国大使館 専門調査員 稲垣朝子

・ 外務省HP 

・ 世界銀行 

・ ダッカ市ポータルサイト 

・ JTB  

・ バングラデシュ統計局  

・ One World South Asia 

・ CIA  

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