第1章 インド-序章 2020年度予算案と経済、税制

2020年度予算案と経済、税制

■直接税の変更点

[個人所得税]

2020年度予算案で、新たにAY2021-22より、以下の個人所得税率が提案されました。

 

個人所得 (INR) 現個人所得税率

(追加税・教育目的税を含む実効税率)

新個人所得税率

(追加税・教育目的税を含む実効税率)

Up to 250,000
250,001 – 500,000 5.20% 5.20%
500,001 – 750,000 20.80% 10.40%
750,001 – 1,000,000 20.80% 15.60%
1,000,001 – 1,250,000 31.20% 20.80%
1,250,001 – 1,500,000 31.20% 26.00%
1,500,001 – 5,000,000 31.20% 31.20%
5,000,001 – 10,000,000 34.32% 34.32%
10,000,001 – 20,000,000 35.88% 35.88%
20,000,001 – 50,000,000 39.00% 39.00%
50,000,000 and above 42.74% 42.74%

年間総所得が 50 万ルピー未満の居住者に対して の1 万 2,500 ルピーの税額免除については、AY2021-22以降も、依然として認められております。

 

本予算案によって提案されました上記の個人所得税率については、既存税率より低いものとなっておりますが、この新税率を適用する場合は、現在認められている各種控除の適用が認められないこととなります。

 

各種控除を適用の上既存の税率を適用するか、又は各種控除を適用せず新たな税率を適用するかどうかは、毎年確定申告の際に選択をすることが認められております。ただし、事業所得を有し、一度新たな税率を適用する場合は、以降、古い税率を適用することは認められません。

 

新たな税率適用の際に認められない各種控除及び税額免除としましては、以下が挙げられます。

  • 個人旅費手当(Leave Travel Concession: LTA)
  • 住宅手当(House Rent Allowance: HRA)
  • 特別手当(Specific allowances)
  • 標準控除(INR50,000まで)
  • 住宅ローン及び自己占有財産に対する支払利子、建物賃貸損失
  • Family pension目的のその他所得に対する控除
  • NPS(国民年金制度)に対する拠出(section 80CCD(2))以外の各種控除

日本人駐在員のケースは、新たな税率の適用の方が望ましい可能性が高いかと存じます。給与所得金額が高額となり、上記のような控除や免税がない場合は、新たな税率の適用が望ましいこととなります。

 

[法人所得税]

2019年10月1日以降に設立された内国法人(製造会社)については、法人税率(追加税・教育目的税を含む実効税率)が17.16%になります。

(基本税率15%×追加税1.10×教育目的税1.04%=17.16%)

 

その他の内国法人については、法人税率(追加税・教育目的税を含む実効税率)が25.17%になります。

(基本税率22%×追加税1.10×教育目的税1.04%=25.168%)

 

旧制度

 

 

対象企業

実効税率(追加税・教育目的税含む) (%)
売上高1000万ルピー以下 売上高1000マン以上1億ルピー以下 売上高1億ルピー超
2018-19年度の売上高が40億未満の内国法人(注記1) 26.00%

 

27.82% 29.12%
外国法人 (注記2) 41.60% 42.43% 43.68%

最低代替税率(MAT)は旧制度を使用する企業にのみ適用されます。

 

注記1: 売上高が1,000万ルピー超、1億ルピー以下の場合、追加税は7%になります。売上高が1億ルピー超の場合、追加税は12%になります。また、健康教育目的税は全てのケースで4%になります。

注記2: 売上高が1,000万ルピー超、1億ルピー以下の場合、追加税は2%になります。売上高が1億ルピー超の場合。追加税は5%になります。また、健康教育目的税は全てのケースで4%になります。

 

 

[外国法人の所得税申告の免除]

外国法人の所得が、配当、利子、ロイヤルティ、およびテクニカルサービスで構成され、源泉徴収税が所得税法115条(A)(1)に基づいて差し引かれている場合(すなわち、基本税率10%+健康教育目的税4%+追加税2%または5%)、外国法人はインドで所得税申告を行う必要がなくなりました。

 

源泉徴収税が租税条約に基づく軽減税率で控除される場合、(例えば、インドと日本間における租税条約 第12条に基づく税率10%などのケース、)外国法人は所得税申告をインドで行わなければなりません。

 

[テクニカルサービスにおけるTDS税率の削減]

TDSの控除率は、テクニカルサービス(専門サービス以外)の場合、10%ではなく2%に軽減されました。(所得税法194J条)

 

[配当分配税(DDT)の廃止]

これまで、内国法人が配当決議によって配当金を支払う場合は、所得税法115条O項に基づいて、その配当金額に対して基本税率15%(追加税、健康教育税も別途課税)の配当分配税が課されておりました。

(一方でまた、配当金を受け取る側である株主は、所得税法10条(34)に基づき、非課税。)

 

配当分配税により、配当を行う内国法人は、税引前利益に対して法人所得税が課税されるのみならず、税引後利益から分配される配当に対してもまた配当分配税が課税されることとなっておりましたが、今回の予算案により、この配当分配税の廃止が決定いたしました。

 

配当を受け取る側の株主は、配当所得の20%の上限で支払利息に関してのみ配当収入に対する控除が認められます。(所得税法57条)

年間総配当金額が5,000ルピーを超える場合、企業はTDSを10%差し引くことになります。(所得税法194条)

 

■所得税申告期限の変更点

 

AY2021-22より、所得税法第44AB条に基づき税務監査が求められる企業及び個人の所得税申告が、以下の通り変更されることとなりました。

対象企業 旧期限 新期限
移転価格税制、非対象企業 翌年9月30日 翌年10月31日
移転価格税制、対象企業 翌年11月30日 翌年11月30日

税務監査報告書(Tax Audit Report)と移転価格報告書(TP Report)提出期限の変更について

 

AY2021-22より税務監査報告書と移転価格報告書の提出期限が以下の通り変更されております。

対象企業 旧期限 新期限
移転価格税制、非対象企業 翌年9月30日 翌年9月30日
移転価格税制、対象企業 翌年11月30日 翌年10月31日


■税務監査報告書適用範囲の変更点

 

現在、総売上高及び総収入が1,000万INRをこえる企業及び個人(専門職の場合は、500万INR)は、インド勅許会計士による税務監査の対象となっておりました。

 

しかし、本予算案より、以下2つの条件に当てはまる場合は、適用売上高及び総収入基準を現在の1,000万INRから5,000万INRへとひきあげることが提案されました。

 

・売上及び収入から生じる現金受領額が総額の5%を超えない場合

・費用を含む現金支払いが総支払額の5%を超えない場合

 

 

■個人の居住性の定義の変更点

 

これまでの会計年度において個人が「インド居住者」とみなされる条件としては、以下の通りでした。

 

・当該会計年度において182日以上インド国内に滞在

もしくは、

・当該会計年度において60日以上インド国内に滞在し、かつ過去4会計年度において365日以上インド国内に滞在

 

また、もしインド居住者とみなされた場合、その居住者は以下の2つのカテゴリーに分類されます。

 

・通常の居住者

・非通常の居住者

 

以下の条件を満たす場合は、「非通常の居住者」となります。

・過去10年間の間に、9年間において非居住者の場合もしくは、

・過去7会計年度においての合計滞在日数が730日未満での場合

 

しかし、今回の予算案により、2020年4月1日付けで、上記の条件が変更され、上記の非通常の居住者の条件の2つ目にある「過去7会計年度においての合計滞在日数が730日未満」という条件は廃止され、今後は、1つ目の条件が少し修正された「過去10会計年度の内、7会計年度において非居住者であった場合」という条件のみとなります。

 

これまで、変更前の条件のどちらかに該当し「通常の居住者」とみなされていたが、今回の居住性の定義の変更により「非通常の居住者」となる場合、その方は課税対象範囲が小さくなるというメリットを受けることができます。

 

【留意点】

上記の個人所得税の居住性の判定基準に関する予算案での提案は、結局取り下げられ、現行と同様の基準判定が適用されることとなりました。

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